2021 Fiscal Year Research-status Report
自己駆動液滴を構成要素として用いた液滴ロボットの設計と機能制御
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20K03881
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 晋平 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 准教授 (40379897)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自己駆動 / 液滴 / 界面活性 / 対称性の破れ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本研究にて新たに発見した特異な自己駆動油滴システムの特性およびその自己駆動メカニズムの解明を行った。この系は二種類の油滴を用いる。片方の油滴は界面活性をもつ長鎖アルコールである1-decanolの液滴で、水面に置かれると周囲に1-decanol分子を徐々に放出する。もう一方の油滴は流動パラフィンで、水面にある疎水性および両親媒性の分子を吸着することができる。これら二種類の油滴を同時に水面に置くと、1-decanol液滴から放出される1-decanol分子をパラフィン液滴が吸着する、界面活性剤分子の流れが生成される。液滴の自己駆動現象は、液滴周囲の界面活性剤濃度に依存して生じる、不均一な界面張力分布を駆動力とする。1-decanol分子が液滴周囲に均一に展開する場合、液滴周囲の界面張力場は液滴を中心として対称であり、そのままでは自己駆動を生じない。液滴周囲の界面活性剤濃度勾配が大きいときにのみ、その対称性は自発的に破れ、自己駆動が開始する。本研究で発見した油滴システムでは、パラフィン液滴の吸着がこの対称性を破る手助けをする。よって自己駆動現象が、パラフィン液滴のない場合と比較してはるかに安定に、かつ長時間持続することがわかった。自己駆動性の安定化は、液滴ロボットの素子に要求される特性の一つである。今後は、本研究での発見を利用して、これらの液滴システムを素子として利用する枠組みを構築することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液滴ロボットの開発のために、様々な液滴の組み合わせが生み出す動的構造の特定が本研究の目的である。今年度の研究では予期していなかった新しい動的構造を発見し、その特性の解明にほぼ全ての時間を費やした。現象そのものは予期されていなかったが、このような創発的な動的構造の出現自体は想定しており、その意味で研究は予定どおりに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に発見した動的構造の大まかな理解は終え、その成果は投稿中である。今後はこの動的構造の利用を考えるとともに、さらに新しい液滴の組み合わせを試していく。その際、本年度の研究によって明らかになった知見を利用する。特に本年度の研究によって、液滴に添加する固体有機物質が液滴の挙動に大きな影響を与えることが明らかになった。この知見は液滴の動的構造を制御するためのパラメータを増やすことにつながるため、これを十分に利用した実験を行っていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため学会および研究打ち合わせのための旅費を使わなかったことが最大の要因である。さらに、本年度に発見した新しい系の研究のために、予定していた実験とは異なる実験を主に行ったことによって物品の購入費を抑えることができたためである。この予定していた実験は次年度に行う予定である。
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Research Products
(4 results)