2020 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体の溶解過程におけるアクティブホール現象の機構の解明
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20K03884
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
及川 典子 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40452817)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / 溶解過程 / 相分離 / 濃度揺らぎ / 界面張力 / 界面不安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体の水への溶解過程において見られるアクティブホール(AH)現象は、これまで主にシャーレ中の溶液を用いて準2次元的な観察が行われてきた。本研究課題ではまず、このAH現象をより系統的に調べるために、直径5mmのガラス管の中でAH現象を生じさせ、準1次元システムとして観察をする実験を行なっている。非平衡過程である溶解現象を定常な状態で観測するために、シリンジポンプを使って水/エタノール混合溶液を試料容器に連続的に注入し、系を非平衡状態に保ちながら測定を行うための装置を構築している。この装置を用いて、AH形成の条件であるイオン液体/水/エタノールの3成分系の平衡相図におけるイオン液体と水の相分離の臨界点近傍において実験を行なったところ、AHの隣り合う穴同士の間隔や穴の形成までにかかる時間など、AH現象における特徴的な量を観測することが可能となった。 現在、転移点における濃度の揺らぎを観測するための動的光散乱システムの構築を行い、ガラス管の試料容器に対応させるための試料ホルダーの準備を行なっている。また液滴の界面張力の時間・空間変化について調べるために、液滴の界面厚および液滴内部の流れを観察する準備としてCCDカメラおよび動的表面張力計、マクロズームを備えた蛍光顕微鏡について準備を行なっている。 一方、濃度をパラメータとして起こる3成分系の相分離に対するモデルを構築し、AH現象の発生機構を数理モデルからも明らかにするために、本研究ではまず、温度をパラメータとする2成分系の相分離の式であるCahn-Hilliard方程式を用いて相分離の数値シミュレーションを行った。今後このモデルを、濃度をパラメータとする3成分系の相分離に拡張し、水/エタノール/イオン液体のそれぞれの相互作用を含めたモデルを考案することにより、数理モデル側面からもAH現象の機構を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の溶解現象に対して、シリンジポンプを用いて水/エタノール混合溶液をガラス管の試料容器に連続的に注入することができる実験系を構築した。この実験系を用いることにより、AHの隣り合う穴同士の間隔や穴の形成までにかかる時間など、AH現象の特徴的な量を観測することが可能となった。今後この実験系を用いて測定を行うことにより、AH形成を特徴づける秩序変数やその制御パラメータに対する依存性を求めることができ、AH現象の機構を解明に向けた重要な性質を得ることができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
AH形成の前駆現象について詳細に調べるために、まず準1次元のキャピラリガラス管を試料容器として用いた実験系で、水/エタノール混合溶液の連続注入を行いながらAHのダイナミクスについて詳細な観測を行う。AHのダイナミクスの制御パラメータ依存性を調べるために、AHの数および大きさ、持続時間、移動速度のエタノール濃度依存性を位相差顕微鏡およびCCDカメラを用いて測定する。次に、AH生成を引き起こす不安定化の起源について明らかにするために、水/エタノールの2成分溶媒における濃度揺らぎおよび界面張力について、実験的に調べていく。まず転移点における濃度の揺らぎを観測するために、動的光散乱システムの構築を行なう。試料容器として界面が観察しやすいキャピラリガラス管を用いるために装置の試料ホルダーを変更する。次に液滴の界面張力の空間変化について調べるために、CCDカメラおよび動的表面張力計を用いて測定を行い、界面張力の不安定性を示す時間・空間的変化を得る。 AH現象における濃度と並ぶ制御パラメータである温度を変化させながら相分離の転移点近傍で濃度の揺らぎを測定する。温度を変化させることによりエタノール濃度の転移点を変化させ、異なるエタノール濃度に対する相分離の挙動を得ることにより、濃度揺らぎとAH形成の関係をの補足的なデータを得る。 以上の実験から制御パラメータと前駆現象(濃度揺らぎおよび界面張力)、および形成される構造の特徴との関係を明らかにし、先行研究において知見が得られている界面領域におけるイオン液体分子の構造などについても考慮しながら、AH現象の発生機構を考察する。さらに濃度をパラメータとする3成分系の相分離として数理モデルを構築していく。
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Causes of Carryover |
昨年度は実験系を準2次元系から準1次元系へ変更することを中心として研究を行なった。そのため、大がかりな装置は必要とせず、大学からの公費により賄うことができた。今年度以降に動的光散乱装置の作成にかかる装置一式、動的表面張力計、顕微鏡の蛍光ユニット等を購入する予定である。
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Research Products
(1 results)