2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on stabilization of plasma using chaos theory
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20K03895
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
福山 隆雄 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20403800)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カオス / 大気圧プラズマ / 電離波動 / カオスの制御・安定化 / 同期現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,大気圧放電プラズマの力学的挙動について研究してきている。昨年度の研究(2つのアルゴン火花放電プラズマを同時に発生させて「合体」させた場合の力学的挙動)を発展させて,ヘリウムを用いたプラズマジェットの明滅リズムについて,実験を通して研究した。特に,2つのプラズマジェットが「結合」する場合の明滅リズムに関する研究を進めている。2つの振動子が「合体」する場合には一体化によって各振動子の独立性は失われるが,振動子が「結合」する場合には,各振動子の独立性は保持されたまま互いに干渉する。大気圧中で生成されるヘリウム・プラズマジェットは,その電源の基本周波数に応じた高速の明滅を繰り返す。その明滅リズムについて,LabVIEWシステムおよびハイスピードカメラを用いて測定できるシステムを構築した。その結果,明滅のリズムについて評価するために,ハイスピードカメラで撮影したデータを解析したところ,プラズマジェットを相互作用させることによって,それぞれの明滅のリズムがそろう現象(明滅リズムが同期する現象)を見出しつつあり,次年度の研究に引き継がれる。
続いて,カオス的な状態を呈するプラズマ中の電離波動に関して,周期外力やフィードバックなどの摂動に対する系の応答について,実験を通して研究してきている。光強度の揺動によって観測されるカオスに対して,周期外力として電場が印加された場合,光信号を電気信号に変換してシステムにフィードバックした場合,そして,周期外力とフィードバックが同時に印加された場合について,カオス軌道がどのような過程を経て周期化するのか,実験およびカオス解析を通して研究を進めた。その結果,フィードバック機構を有する電離波動系のカオスにおいては,フィードバック機構を有しない場合と比べて,周期的な電場外力の印加に対する系の応答が鋭敏になることを,実験を通して明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,電離波動中におけるカオスの制御・安定化に関する研究,および,そこから得られた知見を活用して,プラズマジェットの力学的挙動に関する研究を通して大気圧プラズマジェットの制御・安定化を実現することを目的としている。
大気圧中で生成されるヘリウム・プラズマジェットの力学的挙動に関する研究については,その明滅リズムに着目をして,LabVIEWシステムおよびハイスピードカメラを用いて測定できるシステムを構築した。構築したシステムを用いて研究を進めた結果,プラズマジェットを相互作用させることによって,それぞれの明滅のリズムがそろう現象を見出しつつあり,日本物理学会などの複数の学会で発表してきている。さらに,査読付国際誌において査読中である。
続いて,カオス的な状態を呈するプラズマ中の電離波動に関して,周期外力やフィードバックなどの摂動に対する系の応答について,実験を通して研究してきている。その結果,フィードバック機構を有する電離波動系のカオスにおいては,それを有しない場合と比べて,周期的な電場外力の印加に対する系の応答が鋭敏になることを,プラズマ実験とカオス解析を通して明らかにした。この結果については,プラズマ・核融合学会および日本物理学会で発表するとともに,Response of laboratory plasma influenced by a feedback loop to external force と題して,Progress of Theoretical and Experimental Physics 誌において発表した。さらに,時間遅れフィードバック法を組み込んで,電離波動カオスを制御する測定系を構築し,Plasma and Fusion Research 誌において発表しており,今後の研究の進展へとつながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を踏まえて,以下の通り,今後の研究を推進する。これまでの研究を通して,本研究においては【同期現象】が,特に注目すべき視点であることが明らかとなってきた。
まず,大気圧中において発生させたヘリウム・プラズマジェットを相互作用させ,それらの明滅のリズムや基本周波数などの,力学的挙動に関する新しい知見を得ることを目的とした研究に取り組む。特に,明滅リズムが一致する現象に着目して,なぜそのような現象(同期現象)が生じるのかについて,メカニズムの究明を試みたい。そのために,具体的には,ハイスピードカメラを用いた,より精度の高いプラズマジェットの撮影;明滅リズムが同期するときに,放射電磁波の時系列はどのように変化するのか詳細な研究;同期現象を用いて,プラズマからの発光強度の揺らぎを安定化させる研究,という点に着目した研究を推進する。
続いて,電離波動中におけるカオスの制御・安定化に関する研究について述べる。LabVIEWを用いてプラズマの測定制御系を構築し,時間遅れフィードバック法(ピラガス法)を組み込んで,プラズマ中の電離波動において観測されるカオスを制御する測定系が走り出したため,今後は,その構築したカオス制御の測定系を活用して,電離波動中のカオス制御に関するメカニズムを究明する。特に,強いカオス状態にピラガス法を適用すると,遅れ時間が 0.5 周期と 1.5 周期で SN 比が上昇する(周期性が高まる)という現象,さらに,遅れ時間が 1.0 周期で SN 比が下降する(カオス性が高まる)という現象が観測され,すなわち「理論とは真逆」の遅れ時間で制御が達成されることが分かった。この理論と実験の相違点がなぜ生じているのか,このような点に着目をして,今後の研究を推進していきたいと考える。
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせや学会等がオンライン化され,多くの場合において旅費が不要となり,次年度使用額が生じた。本年度にコロナ禍が与える影響は予測はできないが,オンライン等の整備に活用し,本研究の進展に資する使用を計画している。
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