2020 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of Damage Process by Fusion Plasma in High Toughness Tungsten Alloys
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20K03900
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
徐 ぎゅう 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (90273531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 光貴 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (80379693)
時谷 政行 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30455208)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タングステン合金 / 重水素 / ヘリウム / 照射欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、液相ドーピング法及び放電プラズマ焼結方法でW-Y2O3合金を作製した。透過型電子顕微鏡を用いて、作ったW合金の微細組織を観察した。平均サイズ数十ナノのY2O3粒子がW母体にほぼ均一に分布している。873Kまで温度上昇と共に、引張強度が減少したが、伸びが増加した。最大伸びが40%であった(873K)。一方、1073Kになると、伸びも減少した。走査型電子顕微鏡を用いて、引張試料の破面を観察した。573Kまでの破面は主に粒内破壊と粒界破壊の脆性破面であった。673Kになると、せん断破面が観察された。せん断破面の割合は773Kの方が高かった。873Kで延性破壊の特徴ディンプルが観察された。Y2O3添加による結晶粒の微細化と粒界での不純物の低減がW合金の力学特性改善の原因だと考えられる。 次に、W-Y2O3合金に対して、重水素蓄積に及ぼすFeイオン照射の影響、ヘリウムバブル形成について調べた。核融合中性子照射を模擬するため、Feイオン照射を行った。Feイオン照射を行っていないW-Y2O3合金が市販純Wより重水素の蓄積が多かった。一方、Feイオン照射したW-Y2O3合金においては、純Wに比べ、重水素の蓄積が殆ど変わらなかった。特に、試料表面の欠陥にトラップされた重水素が抑えられた。従って、Y2O3粒子を添加した合金の耐照射性が向上された。また、高温で5keVのヘリウムイオン照射結果から、純Wに比べ、W-Y2O3合金の方のボイドスエリングが抑制されたことが分かった。これは添加したY2O3ナノ粒子がヘリウムバブルをトラップし、バブルの成長を抑えたと考えられる。重水素の蓄積とヘリウムバブル形成の研究成果を論文としてまとめ、発表した。 更に、高温で純WやW-Y2O3合金のヘリウムプラズマ照射特性、W-Nb、W-Pr2O3とW-La2O3合金のヘリウムイオン照射特性も調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初に計画した研究内容、即ち、合金の作製、組織の観察、引張試験及び試験後の破面観察、W-Y2O3合金における水素同位体のリテンションの評価、W-Y2O3合金のヘリウムバブル形成に及ぼすY2O3の添加効果などをすべて実施した。特に、本研究の重点課題、W-Y2O3合金における水素同位体のリテンションの評価、W-Y2O3合金のヘリウムバブル形成に及ぼすY2O3の添加効果の研究成果を論文として発表した。 その他に、装置の都合などの原因で、本研究の計画に入れていなかった高温ヘリウムプラズマ照射とW-Y2O3以外の合金の水素同位体のリテンションの評価とヘリウムバブル形成に及ぼす酸化物粒子の効果ついての研究も実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の計画としては、W-Y2O3合金にさらにMoまたはZrを添加し、W-Mo-Y2O3とWーZr-Y2O3合金における水素同位体のリテンションの評価、W-Mo-Y2O3とW-Zr-Y2O3合金のヘリウムバブル形成について調べる。元素Moを添加すると、Wの強度が増加することが良く知られている。一方、元素ZrがWの力学特性に悪い影響を与えるOやNとの親和力は高いので、W-Y2O3合金よりW-Mo-Y2O3とW-Zr-Y2O3合金の方がもっと良い力学特性を有すると期待されている。 また、MoまたはZrを添加することによって、合金の微細組織、特にY2O3粒子の形状への影響も調べる。 本研究の最後に、これまでの研究成果をまとめ、核融合炉プラズマ対向材にふさわしい材料を提言したい。
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Causes of Carryover |
今年度に、本課題に使われている実験装置の維持費(消耗品)、試料の加工費などが予想より低かったので、次年度使用額が生じた。来年度に、該当助成金をイオン照射装置のイオン源部品の購入や試料加工費として使う予定である。
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