2020 Fiscal Year Research-status Report
乱流の非線形性を介在した同位体効果発現機構の実験的検証
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20K03901
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大島 慎介 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (00469610)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラズマ乱流 / 同位体効果 / 磁場閉じ込め / 核融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、数十年来のミステリーである磁場閉じ込め核融合研究における”閉じ込め特性に対する水素同位体効果”の解明に挑戦している。近年注目されている、乱流の非線形性を介在し同位体効果が生じるという仮説の実験による実証を目指し、A.乱流の非線形特性の実験的観測による同位体効果発現機構の解明,B.磁場配位制御による、非線形乱流を介在した、同位体効果への影響の検証 を目指す。軽/重水素の同位体比を制御し、幅広いパラメータ領域で乱流と帯状流の非線形結合・競合過程の特性の応答を解明する。このための計測器として,開発を進めているデュアル・ドップラー反射計、および多視線干渉計から成る複合計測システムによって乱流、そして帯状流を直接観測し、多様な揺動解析手法を駆使することで、乱流の素過程およびその非線形特性を評価することを狙っている。さらに、乱流と帯状流の非線形結合・競合過程の制御ノブとして、磁場の幾何形状(磁場配位)を制御し、同位体効果に影響を与えうるか、解明を目指している。 2020年度の実績としては,ヘリオトロンJに新規導入したデュアル・ドップラー反射計によるプラズマ流計測に初めて成功し,相関計測をベースとした帯状流の導入を目指す準備が整った.また分布計測用の多チャンネル干渉計の設計を完了し,その構築を開始している.計測器の開発と並行し,これまで静電プローブによって得られた既存データの解析も進めた.これまで乱流や帯状流の挙動が同位体比に応じて変化しているという知見は得られていたが,それ加えて密度ーポテンシャル揺動の強度低減およびデカップリングの結果として,揺動駆動粒子束が低減されていることを初めて明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,帯状流の挙動に対し同位体比依存性が確認されているヘリオトロンJ装置において実施される。軽/重水素同位体比を徐々に変えつつ、乱流を計測し、乱流の基本的特性(乱流の揺動強度、波数、確率密度分布等)を評価すると同時に、帯状流との非線形結合度や帯状流との競合・均衡という観点からデータを整理し、同位体比依存性を調べる。理論的には、同位体効果発現は、衝突周波数に対する依存性が指摘されており、上述した非線形乱流系の特性について計測器が運用可能な範囲で低密度から高密度まで実験を実施し、パラメータ依存性を明らかにすることを目指している. このため,主計測器として、Q-Band(33-50 GHz)のデュアル・ドップラー反射計システムの導入を進めた。これは,ポロイダル方向に上下2点の空間位置の局所密度・速度揺動およびポロイダル速度(径電場)、さらに反射計間の相関計測によって帯状流の計測を狙っている。また,揺動・分布計測が可能な高時間分解能の多視線反射計(反射計と同一のセクションに設置)の導入を進めており,密度分布の変化や反射計の観測点の変化を確認しながら実験を実施することが期待される。 今年度は,ドップラー反射計の初期データ取得に成功した.周波数スペクトルにドップラーシフトを観測しており,プラズマ流の計測に成功している.ドップラーシフトから予測されるプラズマ流速としては既存の荷電分光計測器の結果と同程度であることを確認できた.上下2チャンネルを用いた,プラズマ流の相関計測が実現できる見込みを得た.また分布計測用多チャンネル干渉計の設計,および各光学コンポーネントの初期試験も終了し,現在システム構築中である.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には,初期データ取得に成功したデュアル・ドップラー反射計の改良・改造を進める.帯状流同定のための相関計測においては,片方の反射計観測点を固定し,他方の反射計観測点を径方向に掃引し,対象となる揺動が帯状構造であることを確認することが必要である.しかしながら,現状のシステムでは,二系統ともに同一の発信機を用いているため,独立して周波数掃引することができない.新しい発信機を追加導入することでこの問題を解決する. また,現在の側面ポートからの反射計に加え,上下ポートからの反射計設置の検討を開始している.側面ポート+上下ポートの4方向入射によって,幅広い実験パラメータ領域,幅広い乱流波数領域での揺動計測が期待できる. 分布計測用干渉計については現在構築中であり,2021年度より本格稼働する見込みを得ている.実験開始早期に単チャンネル計測を実現し,その後にまずは既に購入済みの検出器を用いた3チャンネル計測を試みる.将来的に多チャンネル化を進める計画はあるが,既存検出器が高価であるため,比較的安価な検出器などを試用し,低コストで多チャンネル化の実現が可能か,検討を進める. 計測器開発と並行し,同位体効果に関する実験を実施する.軽/重水素同位体比を徐々に変えつつ、デュアルドップラー反射計によって乱流を計測し、乱流の基本的特性(乱流の揺動強度、波数、確率密度分布等)を評価する.また,帯状流探索実験を実施し,観測された場合には乱流との非線形結合度(バイスペクトル解析等によって評価)や帯状流との競合・均衡という観点からデータを整理し、同位体比依存性を調べる。
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Causes of Carryover |
当初購入予定計画と,購入時の物品合計金額との間に差異が生じ,若干の残額が生じたため.
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Development of a Multi-Channel 320 GHz Interferometer for High Density Plasma Measurement in Heliotron J2021
Author(s)
S. Ohshima1,a), P. Zhang2, H. Kume2, C. Deng3,4, A. Miyashita2, S. Kobayashi1, H. Okada2, T. Minami2, S. Kado2, P. Adulsiriswad2, D. Qiu2, M. Luo2, R. Matoike2, T.Suzuki2, S. Konoshima1, T. Mizuuchi1, and K. Nagasaki1
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Journal Title
Review of Scientific Instruments
Volume: -
Pages: -
Int'l Joint Research
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[Presentation] ヘリオトロンJ配位制御実験の拡張2021
Author(s)
大島慎介, 小林進二,山中雄太1, 的池遼太1, 宮下 顕1, 近藤恭斗2,井下圭1, 三好正博1,南貴司, 門信一郎, 岡田浩之, 水内亨, 木島滋, 長﨑百伸
Organizer
先進ヘリカル研究会
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