2021 Fiscal Year Research-status Report
磁気面が壊れたコアからエッジにわたる領域のタングステン不純物輸送シミュレーション
Project/Area Number |
20K03908
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
菅野 龍太郎 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30270490)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ポアソンソルバ / モンテカルロ法 / 新古典輸送 / タングステン不純物 |
Outline of Annual Research Achievements |
タングステン不純物の炉心への蓄積評価は、核融合炉における重要な課題の1つである。タングステン不純物のクーロン衝突による粒子輸送において、有限軌道幅の効果が重要な役割を担っていることが分かっているが、磁場の3次元性や、それにより生じる電場の効果については、未だ十分な取り組みが行われていない。本研究課題では、不純物のクーロン衝突輸送に対する磁場の3次元性と電場の効果に焦点を当てて、研究を推進している。近年、不純物のクーロン衝突輸送を考える際に、磁場の3次元性の考慮は、必須となりつつある。共鳴摂動磁場(RMP)により磁場の3次元性が強まり、その結果、磁気面が壊れたエッジにおいて、静電ポテンシャルをどのように求めるかについて、前年度に引き続き考察を進めた。計算コストの低減のため、磁気面が壊れている領域においてだけ、ポアソン方程式を解いて静電ポテンシャルを求めるモンテカルロ手法の開発・改良を行った。この手法は、ディリクレ・ポアソン混合問題の確率論的解を応用したものであるが、その手法を一般曲線座標系に適用する場合は、座標系のメトリックも考慮して、確率論的解を与えるモンテカルロ・テスト粒子の軌道計算を行う必要があり、そのための改良を考案した。また、この手法の数値精度のテスト粒子数依存性や、空間分解能(テスト粒子のステップ幅が該当)、計算の高速化、従来の手法(差分法や有限要素法など)と組合せた手法の応用などについて考察を深め、数値手法として完成させた。これらの研究成果については、査読付き原著論文としてPlasma and Fusion Research誌において出版・公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、磁場が乱れた領域でも適用可能なドリフト運動論的シミュレーションコードKEATSを改良することで、準定常状態にある温度・数密度分布を求め、それらの分布に影響される不純物輸送を運動論的に扱うシミュレーションを確立し、LHDプラズマのストカスティック領域で観測される「コア領域への不純物流入を抑制する不純物スクリーニング現象」のLHDとは異なる磁場配位への普遍性を調べることを目標としている。令和3年度は、前年度に引き続き、磁場が乱れた領域における静電ポテンシャルを計算する、モンテカルロ法に基づくポアソンソルバの開発・改良を行った。開発したポアソンソルバについて、一般曲線座標系への適用法、数値計算精度、計算の高速化、従来の手法と組合せた手法応用などについて考察を深めたことで、新たな数値手法として確立することができた。そのため、国内学会における報告を行い、この研究成果についての原著論文をPlasma and Fusion Research誌において出版・公開した。また、電磁場の時間的揺らぎ(準定常状態における乱流などの集団現象による揺らぎ)が想定される場合におけるドリフト運動論モデルの構築のため、揺らぎのモデル化について考察を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までに開発したポアソンソルバをドリフト運動論的シミュレーションコードKEATSと組合せ、準定常状態にある背景プラズマ(水素イオンおよび電子)の温度・数密度分布を求め、それらの分布と3次元磁場、および電場に影響されるタングステン不純物輸送の計算が実行できるよう、コードの開発と改良を引き続き行う。ここで、核融合炉で想定されているタングステン不純物の数密度は、背景プラズマと比べて極めて希薄であり、これまでの研究から、クーロン衝突効果については、背景プラズマと同様な衝突オペレータをそのまま適用すると、準定常状態に緩和するまでの計算時間が膨大になる傾向があることが分かっている。また、電磁場の時間的揺らぎ(準定常状態における乱流などの集団現象による揺らぎ)が想定される場合、揺らぎも含めて運動論方程式を解くことは、計算コストが極めて高い。そのため、コード整備の際には、衝突項のモデル化や揺らぎの効果のモデル化など、計算コストの低減も考慮して、タングステン不純物輸送シミュレーションに適したドリフト運動論方程式の近似法の考察を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の継続的な流行により、共同研究者との研究打合せや学会発表は、オンラインでの対応となり、旅費の支出が無くなったこと、および査読付き原著論文の出版が2022年4月となり、論文掲載料の支払いが次年度にずれたことにより、次年度使用額が生じた。令和4年度における使用計画としては、翌年度分として請求した助成金と合わせ、論文掲載料の支払いや、新型コロナウイルス感染症の流行状況を見極めながら、対面での研究打合せ・学会発表のための旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(2 results)