2021 Fiscal Year Research-status Report
Numerical study on kinetic plasma dynamics in ergodic regions
Project/Area Number |
20K03912
|
Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
森高 外征雄 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (20554372)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ジャイロ運動論シミュレーション / ヘリカル核融合炉 / 周辺輸送解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヘリカル核融合炉の炉心および周辺領域を対象とした運動論シミュレーションを行うためのコード開発と大型ヘリカル装置(LHD)への応用である。昨年度までに引き続き、課題であった周辺領域における静電場計算に関する手法開発と、物理課題への応用としてLHD炉心領域における同位体効果に関する研究を行なった。前者については、これまでに開発してきた計算手法、すなわち周辺磁場構造に適合した非構造格子の生成とジャイロ運動論ポアソン方程式の反復解法を組み合わせ、シミュレーションコードへの実装を進めた。後者については、複数の水素同位体が混合したプラズマにおける輸送特性をイオン温度勾配不安定性の準線型解析に基づいて調べた。混合プラズマを用いることで核融合反応を高効率化することができ、一部のトカマク装置で実験が行われてるほか、建設中の大型核融合実験炉「ITER」でも軽水素や重水素を用いた後に混合プラズマの閉じ込め実験が計画されている。シミュレーションの結果、単一の水素同位体プラズマとは異なり、炉心部から外に向かう熱フラックス(あるいは熱伝導率)が(平均)質量数に依存しなくなるという結果が得られた。これは、重水素成分が少量であっても軽水素の熱フラックスの増大に寄与することによる。このことは、混合プラズマ中でも従来の予測(ジャイロ・ボーム則)よりも良好な熱フラックスの質量数依存性が実現することを示唆している。また大域的な径電場は、良好な質量数依存性を維持したまま熱フラックスの低減に寄与することが明らかになった。これらの成果は、2つの国際学会で発表(一件は招待講演)され、論文誌への投稿を準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発中のジャイロ運動論コードの大型並列計算機「富岳」への移植と最適化が概ね完了した。また、径電場の有無を含む様々な条件下で、計算結果の妥当性を確認した。これらにより富岳での開発・実行環境が整備され、効率的なパラメータサーベイによって、大型ヘリカル装置における同位体効果に関するシミュレーション研究が進展した。一方、非線形シミュレーションについては、磁場平衡データや温度プロファイルに応じて、数値ノイズや人工的な不安定性が生じる場合があり、やや進展が滞っている。平衡データの作成やジャイロ運動論モデルによる非線形シミュレーションについては、国際共同研究を実施しているプリンストンプラズマ物理研究所(PPPL)が多くのノウハウを持っており、不安定性の要因や適切な平衡データの生成について連携しながら検討を進める必要がある。大型ヘリカル装置周辺プラズマへの応用については、これまでに開発した計算手法を統合しながら計算コードに実装し、来年度に実施する周辺プラズマシミュレーションへの準備を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、大型ヘリカル装置周辺領域に関するシミュレーションを、比較的簡単なモデルから開始する。炉心領域の外周(最外殻磁気面)におけるプラズマの状態を境界条件とし、粒子軌道計算に基づいて閉じ込め容器壁(ダイバータ)までのプラズマ密度分布を求める。この密度分布を使って、周辺領域に対する静電場計算のテストを実施する。これに基づいて、最外殻磁気面近傍でのプラズマの状態と周辺部での静電場構造およびダイバータ粒子/熱フラックスとの相関関係を実験と比較しながら検証する。このようなシミュレーションをベースに、より高度な計算スキームを実装していくことで、将来的な周辺乱流シミュレーションの実現を目指す。追加する計算スキームには、非線形シミュレーションやプラズマ・中性粒子相互作用の導入に必要なものが含まれており、プリンストンプラズマ物理研究所と連携しながらトカマク核融合炉の周辺シミュレーションで用いられているものを拡張して用いる。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に影響が長引き、多くの国際学会が延期またはオンライン開催になったことから、海外出張旅費の使用ができなくなっている。また、海外共同研究を行なっているプリンストンプラズマ物理研究所への訪問も延期されている。平衡データの作成やトカマク周辺解析との共有部分についてはプリンストンプラズマ物理研究所との連携が不可欠であり、コロナ禍が終息してきたときに訪問する予定である。
|