2022 Fiscal Year Research-status Report
Numerical study on kinetic plasma dynamics in ergodic regions
Project/Area Number |
20K03912
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
森高 外征雄 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (20554372)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジャイロ運動論モデル / 核融合炉周辺プラズマ / 同位体効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非軸対称なヘリカル型核融合炉を対象とした大域的運動論シミュレーション、特にダイバータや真空容器壁とプラズマが接触する周辺領域を含む全系シミュレーションの実現を目的としている。閉じ込め磁場や装置形状をシミュレーションに取り入れるために,非構造格子系と粒子法を用いたジャイロ運動論Particle-in-Cellコードを開発してきた。開発したコードを大型ヘリカル装置の炉心領域に応用して実施した、大域的な径電場がプラズマの熱輸送や同位体効果にもたらす影響についての研究を論文にまとめた(T. Moritaka et al., Nuclear Fusion 62, 126059 (2022))。これに関連して、他の大域的ジャイロ運動論コードや理論的なスケーリング則と、比較可能なパラメータ領域でベンチマークを行った。また、ヘリカルダイバータ近傍の複雑な磁場構造を扱うためのシミュレーション手法開発を進めた。トーラス方向から大きく逸れた磁力線構造をジャイロ運動論モデルで扱うため、数値最適化を使って磁力線に垂直な曲面を生成し、その曲面上に磁力線構造に応じた多階層格子を生成する。さらに曲面との交差判定を含む磁力線追跡や曲面上の数値微分を行うための計算スキームを開発・実装することで、磁場構造に適合した格子系をParticle-in-Cell法の時間ステップサイクルに組み込むことが可能になった。これらは、ヘリカル型核融合炉全系シミュレーションモデルの基幹となる部分である。本成果は招待講演を含む二件の国際学会で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘリカル型核融合炉を対象とした大域的ジャイロ運動論シミュレーションコードの開発と大型ヘリカル装置への適用を進めた。コード開発については、ヘリカルダイバータ近傍の複雑な磁場構造に適合した空間格子の生成に加えて、そのような空間格子を使った静電場ソルバーと、粒子-格子間の補間スキームを開発することで、Particle-in-cellシミュレーションの時間ステップサイクルの中に組み込むことができた。大型ヘリカル装置の炉心領域については、既存の大域的ジャイロ運動論シミュレーションコードとベンチマーク計算を実施しながら、いくつかの物理課題に応用し信頼性の高い計算ができることを確認した。これらの成果を組み合わせることで、ヘリカル型核融合炉周辺領域に対するジャイロ運動論シミュレーションの基盤を形成することができると考えられる。核融合炉周辺領域のシミュレーションでは、周辺領域特有の磁場構造に加えて、中性ガスや金属壁との相互作用を考慮する必要がある。これらについては、磁場配位にほとんど依存しないと考えられるため、プリンストンプラズマ物理研究所で開発されてきたトカマク型核融合炉周辺領域向けのジャイロ運動論コードと計算手法を共有することで対応する予定であった。しかしコロナ禍の関係で海外との共同研究はやや遅れ気味であり、コードの共有による中性ガスあるいは金属壁との相互作用モデルの導入は来年度に持ち越されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で扱う計算コードは、プリンストンプラズマ物理研究所でトカマク型核融合炉周辺領域向けのジャイロ運動論コード”X-point Gyrokinetic Code (XGC)”の主要部分を非軸対称な磁場配位に独自に一般化したものである。非軸対称系への一般化と富岳をはじめとした国内の大型並列計算機への最適化に伴い、コードの内容は大きく変更されている。今後、プリンストンプラズマ物理研究所に滞在し、中性ガスや金属壁とプラズマとの相互作用などXGCに導入されている最新の計算モデルをヘリカル型核融合炉向けに改良・移植する予定である。可能な限り両コードを統合していくことで、Wendelstein 7-Xをはじめとした各国のヘリカル/ステラレータ型核融合炉を対象とした国際共同研究の基盤とすることを目指す。また、ヘリカル型核融合炉周辺領域への最初の応用として、大型ヘリカル装置周辺領域における典型的な静電場構造をジャイロ運動論モデルに基づいて調べ、ExBドリフトを通じてダイバータへのプラズマ輸送にどのような影響をもたらすかを明らかにする。得られた結果について、大型ヘリカル装置で計測されているダイバータ粒子束と定性的な比較を試みる。
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Causes of Carryover |
予算の大半は学会発表及びプリンストンプラズマ物理研究所(PPPL)との共同研究を進めるための海外渡航費用である。コロナ禍により、学会の多くがオンライン開催となったほか、渡航制限等によりPPPL訪問が延期になっていた。本研究課題の最終年度にPPPLに長期滞在し、これまでにヘリカル型核融合炉向けに開発してきた計算コードを、PPPLで開発されているトカマク型核融合炉向けコード、特に周辺プラズマ解析に必要な中性ガスやプラズマ・壁相互作用のモデルと組み合わせる。これによって、本研究課題におけるコード開発を完結させるとともに、今後の国際共同研究につなげることを目標とする。
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