2020 Fiscal Year Research-status Report
定量分光診断のための原子番号依存性を利用した高電離重金属イオンの原子データの整備
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20K03914
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
仲野 友英 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部, 上席研究員 (50354593)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | タングステン / ナトリウム様イオン / マグネシウム様イオン / 電離断面積 / 再結合断面積 / 二電子性再結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
タングステンの63価及び62価イオン(それぞれナトリウム様及びマグネシウム様イオンで、束縛電子数が11個及び12個)の3s-3pスペクトル線強度の電子衝突エネルギー依存性を原子構造計算プログラムで計算し、電気通信大学のEBIT装置で測定されたそれと比較を行った。概ね良い一致を示したが、測定データが少なく二電子性再結合の共鳴構造に基づく急激なスペクトル線強度の変化が実験測定では捉えられていない可能性があるため、理論計算と一致するかは不明である。今後、測定データの拡充を進めるとともに、測定データを矛盾なく説明できるように理論計算の改善を進める。 また、核融合科学研究所のLHD装置でタングステンに加えて、金、白金、ハフニウムを入射して原子番号に対して系統的に4s-4pスペクトル線強度の測定を行った(LHDのプラズマの電子温度は十分には高くないため、例えばタングステンの場合、63価及び62価の3s-3pスペクトル線ではなく45価及び44価イオン(それぞれ銅様及び亜鉛様イオンで、束縛電子数が29個及び30個)の4s-4pスペクトル線強度の測定を行った)。しかしながら、実験時間の制限によりデータの取得には至らなかった。一方で、測定データとの比較のため理論計算による金、白金、タングステン及びハフニウムの銅様及び亜鉛様イオンの4s-4pスペクトル線強度の計算を行った。タングステンの銅様及び亜鉛様イオンの4s-4pスペクトル線強度の比は電子温度が 1~10 keV の範囲では一定値(0.44)となることが研究代表者の研究で明らかにされていたが、同様に、金、白金、及びハフニウムの銅様及び亜鉛様イオンの4s-4pスペクトル線強度の比も一定値(元素によって0.43~0.45)となることが確かめられた。実験測定データが待たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、タングステンの63価及び62価イオンの3s-3pスペクトル線強度の電子衝突エネルギー依存性を原子構造計算プログラムで計算した。また、電気通信大学のEBIT装置で測定したタングステンの63価及び62価イオンの3s-3pスペクトル線強度の電子衝突エネルギー依存性データを入手した。これらの理論計算と実験測定の比較を進め、測定データをよく説明できるように計算条件の改善を進めている。以上は計画通りである。 また、これに加えて、核融合科学研究所のLHD装置でタングステンに加えて、金、白金、ハフニウムを入射して原子番号に対して系統的にスペクトル線強度を比較するための測定を試みた。実験時間の制限によりデータの取得には至らなかったが、理論計算によるスペクトル線強度の計算を行い、比較の準備を進めた。 以上から、当初予定通りの進捗に加えて、成果には至らなかったものの前倒しで実験を行う機会を得たため、進捗は概ね順調と捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には、計画通りタングステンの63価及び62価イオンの3s-3pスペクトル線強度を原子構造計算プログラムで計算した。また、3s-3pスペクトル線強度の実験測定データを入手し、計算結果との比較を進めた。 従って、2021年度には、金、白金、タンタル及びハフニウムに計算を拡張し、原子番号に対して系統的に同一条件で3s-3pスペクトル線強度を計算する。これによって、原子番号のわずかな違いによる 3s-3p スペクトル線強度に対する影響を調べる。国内外の学会で実験データを収集するとともに、文献調査などで得られた実験データと比較し、理論計算の改善を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、予定していた国際学会への参加を取りやめた。そのための旅費が次年度使用額として生じた。次年度には成果発表のための旅費、あるいはリモート学会参加の場合を想定してノートPC等の購入費として使用する予定である。
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