2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03915
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
松井 雅義 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50415791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶋 孝之 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30251119)
谷野 孝徳 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50467669)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放電プラズマ / 食品加工 / 焙煎 / 火入れ / 機能性表示食品 |
Outline of Annual Research Achievements |
真空デシケーター中に高電圧電極として用いるステンレスメッシュを接着した石英板、シリコンゴムのスペーサー、アース電極として用いるステンレス板から構成される放電装置を設置し、約1/2気圧に減圧した条件でコーヒー豆を撹拌させながら誘電体バリア放電を発生させることで、短時間(2~3分)で焙煎することが可能な技術を確立した。加熱時間が短くて済むため、飲料原料の香味成分や機能性成分の分解抑制が期待できる。焙煎後のコーヒー豆は膨張し、黒褐色に変色した。焙煎後のコーヒー豆の断面も黒褐色であることが認められたため、外部のみでなく内部も一様に加熱されたと考えられる。色調の変化を指標とすると焙煎度合いは深煎りの状態に相当し、香りについては特有の焙煎香が確認された。この結果により、高電圧・プラズマ技術が飲料原料の焙煎に応用できることが証明された。 本方法で焙煎したコーヒー豆の状態は比較的均一であったが、部分的な煎りムラや焦げが認められた。これはおそらく加熱に伴い排出される水分(水蒸気)によりアース電極のステンレス板にコーヒー豆が付着し易い状態になり、撹拌が阻害され、局所的な加熱が生じたことが要因であると考えられる。コーヒー豆由来の水分が抜けやすくなるように石英板とステンレス板との間の空間をより拡張する、もしくはアース電極をステンレス板からステンレスメッシュに変更し、高電圧電極と位置を入れ替え上面に設置するなど、放電装置の構造をさらに改良することで、焙煎時におけるコーヒー豆の撹拌状態を維持することが可能になると考えられる。このことにより、コーヒー豆の部分的な煎りムラや焦げの発生を抑制し、焙煎の均一性を向上させることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画の目標をほぼ達成できた。 「各種飲料原料の焙煎・火入れ装置の開発」について、真空デシケーター中に放電装置を設置し、誘電体バリア放電を発生させることでコーヒー豆20粒程度を焙煎することが可能な実験系を構築した。焙煎後のコーヒー豆の部分的な煎りムラや焦げを抑制し、焙煎の均一性を向上させるために必要な装置構造を明確化できた。 もう一つの研究課題である「高品質な飲料原料を得るための焙煎・火入れ条件の検討」については、コーヒー豆の焙煎香と色調の変化を指標として評価したところ、電極間距離、電圧の印加条件、処理時間、撹拌速度を最適化することで、焙煎度合いが深煎りのコーヒー豆を比較的再現良く得られる条件を見出すことに成功した。従来法では焙煎に十数分から数十分を要するところ、本方法では2~3分と大幅に時間を短縮化できることが明らかになった。この特性は飲料原料の加熱に伴う香味成分の揮発や機能性成分の分解を抑制する上で極めて有効であると考えられる。一方、本方法で浅煎りや中煎りのコーヒー豆を焙煎することは困難であった。焙煎度合いのコントロールは今後検討すべき課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の計画に従って研究を実施する。 「各種飲料原料の焙煎・火入れ装置の開発」について、前述の通り放電装置の構造を改良することで煎りムラや焦げの発生を抑制し、焙煎したコーヒー豆の均一性の向上を図る。さらに、コーヒー豆の焙煎度合いのコントロールやスケールアップなどを達成すべき課題として取り組む。茶葉の火入れに特化した装置の開発にも着手する。 「高品質な飲料原料を得るための焙煎・火入れ条件の検討」については、焙煎・火入れしたコーヒー豆・茶葉の抽出液であるコーヒー・お茶の色、香り、味について官能試験を実施し、市販品と同等以上の品質が得られる処理条件を明らかにする。 「放電プラズマにより焙煎・火入れした飲料原料の成分分析、物性評価と官能試験」については、放電プラズマにより焙煎・火入れしたコーヒー豆・茶葉の色素および機能性成分の抽出条件を確立し、それぞれ分光分析とHPLCで定量する。香味成分についてはヘッドスペースガスクロマトグラフィーを用いた検出条件を明らかにする。本方法により得られた焙煎・火入れ済みコーヒー豆・茶葉の成分分析値を市販品の値と比較することで品質の特性を把握する。
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