2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of calculation methods for lattice QCD in master field formalism
Project/Area Number |
20K03924
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浮田 尚哉 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (50422192)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格子QCD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、誕生以来カラー閉じ込めやハドロン物理の諸性質を定量的に明らかにしてきた格子QCDを用いた物理量測定の更なる精密化を実現する手法の開発と整備である。3種類の手法を試みる:(1)格子QCDの計算時間の大半を占める反復法による線形連立方程式の解法(ディラック行列の逆行列計算)の機械学習による加速化、(2)シグナルノイズ比の改善による統計誤差の削減、(3)離散化された時間と運動量の高解像度化。特に、(1)は機械学習を初期残差の小さな初期解の推定に利用して、反復回数を減らすことで計算時間の削減を得る。つまり、機械学習前処理付き解法の提案である。これは、格子QCDに特化した技法ではなく、反復法による線形連立方程式の解法を利用する計算科学に広く応用できる普遍的な技法の開発にもなっている。
令和2年度は、上記(2)のシグナルノイズ比の改善を目的とした手法(クリスタルソース法)を、PACSグループが生成したマスターフィールド形式と呼ばれる巨大体積の格子QCD配位(PACS10)に対するハドロンスペクトルの計算に適用して、その実用性の検証を行った。この手法は、理論的に体積が大きくなるほど効率が上がり、巨大体積向きであるが、これまでストレンンジクォークからなる比較的質量の大きなΩバリオンの計算に適用されただけであった。本年度は、アップ、ダウンクォークを含めたNf=2+1の軽いハドロンスペクトルの計算に用いて、軽いクォークを含んだハドロンスペクトルにも、適用可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
例年開催されてきた研究会が、中止やオンラン開催に変更となり、研究課題に関連する情報収拾や議論が十分に出来なかった。そのために、当初予定より幾分遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、数値実験用の計算資源を確保して、(1)格子QCDの計算時間の大半を占める反復法による線形連立方程式の解法の機械学習による加速化、(3)離散化された時間と運動量の高解像度化の開発と整備を進める。
また、(2)シグナルノイズ比の改善による統計誤差の削減に関しては、更なる整備と開発を行うと同時に、令和2年度に行った計算の統計精度を上げて、その結果を論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた研究会と学会が、中止あるいはオンライン開催になり、旅費の支出がなくなったために、次年度使用額が生じた。 翌年度の計画では、旅費と数値実験用の計算資源確保に使用予定である。
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