2020 Fiscal Year Research-status Report
Classification of black hole spacetimes toward verification of no hair conjecture
Project/Area Number |
20K03929
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野澤 真人 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (60547321)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ブラックホール / アインシュタイン方程式 / 時空特異点 / ワームホール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はファントムスカラー場が存在する場合の,(1)静的・湾曲型解の組織的分類, (2)ディラトン電荷を持つ場合への拡張,(3)漸近(A)dS時空への一般化を行った.(1) 任意次元でのEinstein方程式の湾曲型の解を完全分類し,3つのブランチが存在することを示し,そのうち2つの解には,地平線に覆われていない平行移動曲率特異点と呼ばれる時空特異点が必ず存在することを明らかにした.またそのうち一つの解が正則なワームホールを表すことを証明した.ワームホールは別宇宙への入り口とみなされ,ブラックホールの事象の地平線と局所的に同等の性質を持つ.このような喉構造は負のエネルギーを持つ物質場により実現されるが,我々が構成した解はEllisらによって得られた解の高次元への拡張となっている.(2) ファントム場がMaxwell場に結合している場合の解の構成を行った.静的なKillingベクトルにより,系を1次元低い次元のEinstein-スカラー系へ帰着させることにより,その標的空間の対称性を利用して(1)で得られた解にディラトン電荷を加えた厳密解を構成した.特にファントムの場合は特別なディラトン結合定数が存在し,標的空間の対称性が反単純群でない特殊な構造を持つことにより,解の性質が大きく変わることを示した.(3)さらに(1)で得られた解を種とし,スカラー場のポテンシャルを加えることで,漸近(A)dS時空への拡張に成功した.またこれらの解がブラックホールやワームホールを表すためのパラメータに関する条件を整合的に求めた.特に,初めての漸近(A)dS球対称ワームホール厳密解を構成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(i) ファントム場が存在する場合は,球対称なブラックホールが存在しないことを示した.特に,平行移動曲率特異点が存在することを示し,正則な解ではないことを明らかにした. (ii) 漸近(A)dSの場合,系統的にEinstein方程式の厳密解を構成する手法は知られておらず,無毛仮説の検証において大きな足枷となっていたが,漸近平坦な球対称解から系統的な構成法を示すことができた.また,Schwarzschild-(A)dSブラックホールの他に,地平線の外側で正則なスカラー場の毛を持つブラックホールが存在し,無毛仮説が破れていることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に行った漸近的AdSのブラックホール/ワームホール解は球対称性を持つものであったが,地平線がゼロや負の曲率を持つ場合にどのように性質が変わっていくのか議論する.また,Einstein方程式の真空定常解のうち,Kerr解を特徴づける局所的な障害テンソルを見出すことに成功した (arXiv:2103.06455 [gr-qc]).今後はこれの軸対称版への拡張を探求する.これによりKerrブラックホールの持つ幾何学的特性がより鮮明になるであろうと期待できると同時に,非線形シグマ模型が応用できない漸近AdS時空の回転ブラックホールの一意性解析に向けて大きなステップとなると考えられる.
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Causes of Carryover |
当初参加予定していた研究会がオンラインとなったため,旅費を使用できなかったため,次年度使用額が生じることとなった。
2020年度に予定していた国際研究会への参加に使用する.
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