2021 Fiscal Year Research-status Report
Classification of black hole spacetimes toward verification of no hair conjecture
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20K03929
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
野澤 真人 大阪工業大学, 工学部, 講師 (60547321)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ブラックホール / アインシュタイン方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,一般相対性理論における最も基本的なブラックホールであるKerr解の幾何学的探求を行った.これまでの定常ブラックホールの分類法では,何故Kerr解が選ばれるのかという点が明らかではなく,Kerr解を特徴づけるテンソル場の探査を行った.具体的には,先行研究において静的時空で見出した障害テンソルを定常時空の場合には複素に拡張することによって,Cottonテンソルの複素版であるSimonテンソルをより汎用性の高いシンプルな障害テンソルによって表すことができた.ここで見出したテンソルは,標的空間のSU(1,1)対称性が明らかな定式化という利点を備えており,このテンソルが消える条件からKerr計量を再構築することができた.さらに,Marsによる共変的な4次元表式を複素対称テンソルに一般化することにより,Kerr-NUTクラスの新たな代数的条件式を見出した.また,Einstein-Maxwell系への拡張にも成功した.この成果は論文にて発表した.
この他に,漸近的AdS時空における静的ブラックホールに対する発散恒等式の構築にも成功した.特に,ブラックホールの位相に関する制限を与える不等式を導いた.コボルディズム理論などの高度な数学を用いることなく,このような不等式を導くことができたので,漸近AdS時空のブラックホールの分類へ向けて一つの成果であるといえる.この成果は日本物理学会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Kerr解を特徴づける自然なテンソル場を見出した.これは局所的なテンソル場ではあるものの,Kerr解の背後にある幾何学的特性を強調するものであり,ブラックホールの大域的分類へ向けて有用な戦略であるのは当初の予定通りである.一方,ブラックホールの安定性に関しては,近年超対称ゲージ理論との新たな接点が見出され,新たな方向の研究が進んでいることもあり,関連分野の論文のフォローに時間が取られている.しかしこれも予想の範疇であり,「おおむね」順調だと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
Kerrブラックホールを特徴づける大域的なテンソル場の探査と,それを用いた発散型の方程式の導出を目指す.既に軸対称真空時空においては,2x2の複素固有値問題に帰着できることを示しており,発散方程式の構築を目指す.
漸近的AdS時空における静的ブラックホールの分類に関しては,これまでいくつかの散発的成果が得られており,どの段階でまとめて論文にするかの目処をつけ,論文執筆・投稿を目指す.
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Causes of Carryover |
近年のコロナウイルスの状況により,当初予定していた外国出張がいまだできていない.その一方で,専門知識の提供のための研究セミナーを開催したため,謝礼金の支出が生じた.その収支差額で次年度使用額が生じた.
【使用計画】新型コロナウイルスによる海外出張中止が長引くようであれば、オンラインツールとしてPCのデバイスや周辺機器を購入するために,海外出張旅費を物品費に充当する。
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