2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K03932
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大河内 豊 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40599990)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 弦理論における4次元宇宙 / 宇宙定数 |
Outline of Annual Research Achievements |
弦理論から派生した高次元の宇宙モデルにおいて,宇宙定数と物質場のエネルギー密度にある種の関係が付けられるモデルを調べた.宇宙定数が他の物質場の密度の関数として与えられることは,宇宙項問題の解決に向けた大きな前進であると考えられ興味深い.その方向性において,特に今年度はインフレーションを含めたモデルの構築のアイディアを模索し,高次元の場の理論における具体的な模型の構築を試みた.現時点では,要求される条件を全て満たす模型を作ることはできていないが,部分的には満たすことができるモデルを見つけることに成功した.それがひとつの成果である.4次元の重力をうまく再現するためには,4次元で粒子として見える物質は高次元で紐のような物体である必要があるが,そのダイナミクスをより詳細に調べることで,4次元理論での相転移を実現するモデルへと拡張させていきたい.紐の崩壊と4次元の重力理論がどのように折り合いがつくのかを理解する必要がある.その解決が今後の課題である.この業績の部分的な成果や関連した研究内容については,論文としてPhysical Review Dに掲載したり,学会や研究会等で発表した.
また,今年度は弦理論におけるスワンプランド問題との関連性も調べた.スワンプランド問題の中でも特に関連が深いのはトランスプランキアン検閲官仮説である.これは昔から言われてきたことであるが,近年のスワンプランド問題により再び脚光を浴びている予想である.この予想と一見矛盾するような弦理論のセットアップでも,その時空にある種の物質場が存在すると,その寄与により崩壊が促進され,条件を回避することができることを示した.その際に,WKB近似が破綻してしまう領域においても,量子力学の計算結果を応用することで,精度良く寿命を計算できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度もコロナ禍で研究会がオンラインとなり,活発な議論を他の研究者と行う機会が大変少なかった.そのため,異なる背景をもつ研究者との議論や情報提供がスムーズに行うことができず,当初予定していたよりは,研究が遅れていると感じである.特に宇宙論やブラックホールを専門とする研究者との議論はこの課題の達成には重要であり,来年度はこの改善に努め,積極的に議論の場を作っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現在進めている課題をまずは完成させる予定である.そのごこれまでの研究から得られた重力解の計算方法をもとに,より興味深いがテクニカルに難しい状況を扱っていく予定である.それはより弦理論の中での望ましい議論となり,スワンプランド問題に対する,いくつかの示唆が得られると期待される.また,コロナ禍であったも小規模なミーティングを細かく開催することで活発な議論や情報提供の場を作っていく予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍で国際研究会への参加を見送ったためその旅費を繰り越した.また,重力理論の専門家による情報提供や講義などの機会を作ることができず,そのための旅費,謝金等も次年度使用額が生じた理由である.徐々に制限も緩和されつづあるので,次年度は,状況を見ながら国際学会への参加や重力理論家からの情報提供の機会なども行っていきたい.
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