2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K03932
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大河内 豊 九州大学, 基幹教育院, 教授 (40599990)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | KKバブル / 真空崩壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,超弦理論における真空構想の理解を深めるために,超弦理論特有の真空崩壊であるKaluza-Klein真空崩壊について研究した.この真空崩壊は,弦理論が予言する内部空間が消失することにより,何もない時空への崩壊を起こす,興味深い弦理論特有の例となっている.場の理論の真空崩壊の研究では,しばしばバウンス解とよばれるユークリッド化された理論の古典解が用いられる.これまでのKKバブルに関する先行研究では,特異性をもたない性質のよい古典解に注目が集まっており,特異性を含む解についてはあまり調べられてこなかった.我々は,近年異なる文脈で発展したテクニックをこのKKバブルに応用することで,特異性のあるバウンス解が真空崩壊にどのように影響するかについて調べた.その結果,特異点を持つことにより,真空崩壊は早くなり,従来思われていた以上の早さ準安定状態は崩壊することがわかった.これは,宇宙創生の時期に,高エネルギーの準安定状態が繰り返し現れ,次々に移り変わりながら我々の宇宙が創生された可能性を示唆している.また,我々は,その結果にしたいして熱力学的考察を行った.特異点を持つことで,エネルギー的にロスする部分はあるが,それを上回るほどのエントロピーの増加が起こり,それにより,トータルでみると,より効率的な崩壊を与えることがわかった.今回は,5次元時空の一つが筒状に巻き付いた形の内部空間を考えたが,,今後より一般的な場合でも試みていく予定である.この業績は論文としてまとめarXivに投稿し,現在学術誌に投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究者の所属の変更があり,それに伴う業務等で研究時間が減ったことと,研究会に参加することができなかったため,やや遅れた感じになっている.
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究は弦理論における多くのKKバブルに類似したモデルにも適用可能であるので,より一般化した状況における真空崩壊を考えていく予定である.また,今回は詰めきれなかったネガティブモードの問題もあるので,そこを精査してより精度の高い議論をしていく予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により国際会議への参加を見合わせていたため繰越が生じている.また,研究成果も当初予定していたより,やや遅れぎみであることから,国内での発表への費用も次年度に持ち越すことになった.
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