2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K03934
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松浦 壮 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (70392123)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超対称性 / 格子ゲージ理論 / 数値計算 / グラフ理論 / ゼータ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度、FKM模型は普遍的にGWW相転移を起こすことを発見したものの、相転移の次数やその位置、起こり得る相転移の回数などの不明な点が残っていた。そこで本年度は、この相転移について理論と数値計算の双方を用いた調査を行った。 FKM模型は、標準的な格子ゲージ理論の作用であるWilson作用をその中に含み、ゲージ理論と同じ対称性を持つ模型であると同時に、その分配関数がグラフゼータ関数で表されるという著しい特性を持つ。一般的なパラメータの場合、登場するゼータ関数はBartholdiゼータ関数と呼ばれる関数になるが、我々は今回、関数としての特性がよく調べられている、最も単純な伊原ゼータ関数で記述されるパラメータ領域におけるFKM模型を詳細に調べた。 我々はまず、FKM模型をGWW模型と呼ばれる単純な理論で近似することで、弱結合領域での相転移の回数が、グラフの基本サイクルの角数のバリエーションによって決まることを明らかにした。 また、伊原ゼータ関数には、関数等式と呼ばれるゼータ関数に特有の恒等式が知られている。この恒等式は、パラメータを逆数にしたゼータ関数の値が、元々のゼータ関数と同じ値を持つことを保証する恒等式であり、FKM模型の分配関数に対しても成り立つ。FKM模型の場合、このパラメータは結合定数に相当するため、この恒等式が成り立つということは、FKM模型には、強結合領域と弱結合領域の間に双対性があることを意味している。FKM模型が通常の格子ゲージ理論と同じユニバーサリティクラスに属していることを考えると、これは、現実のゲージ理論への新しい知見を含む可能性のある、興味深い成果である。 我々はまた、これらの理論的な予言を数値計算によって検証し、理論の構造を正しく捉えていることを確認すると同時に、グラフの詳細に依らずに、相転移の次数が3次であることを示す強い証拠を得た。
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