2021 Fiscal Year Research-status Report
超一様分布列を用いた極めて高速に収束しかつ高精度なファインマン積分の計算法
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20K03941
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| Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
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Principal Investigator |
湯浅 富久子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 名誉教授 (00203943)
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| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 超一様分布列 / ファインマン積分 / 高次元数値積分 / 並列化手法 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
場の理論における摂動法による数値計算は、実験と理論を比較するための重要なツールである。ループを有するファインマン・ダイアグラムの計算では、ファインマン積分が現れる。ファインマン積分では、素粒子の質量及び外線の運動量がパラメータとして関与し、その値によっては数値的な不安定性や発散が生じて積分は困難になる。これに対して我々は、積分に現れる発散を数値積分と外挿法の組み合わせで発散を数値的に取り扱う方法を開発している。この方法は完全に数値的な方法なため、統一的で汎用性が高い。一方で、ファインマン・ダイアグラムのループの数が大きくなると積分の次元数があがり、計算時間長くなってしまうという現実的な課題がでてくる。本研究の目的は、超一様分布列を用いることで、従来より100倍以上高速に収束し、かつ高精度にファインマン積分を実行する数値的な方法（直接計算法という）を開発することである。
令和2年度に続き、4ループセルフエネルギー型トポロジーのファインマン積分を事例に直接計算法の性能向上のための開発と性能試験を行った。4ループでは、内線数が5から11までのファインマン・ダイアグラムを研究対象とすることを計画しているが、令和3年度は、8から11までの内線を有するダイアグラムに取り組んだ。これは、7次元から10次元までのファインマン積分を実行することになる。Rank-1 Lattice Ruleによる超一様分布列を用いたQMC法および二重指数関数型積分法の二つにより、数値積分を実行し精度および計算時間の両面から性能評価を行った。その結果、前者をGPUで実行すると、高い精度維持しつつ従来より短い計算時間でファインマン積分の結果が得られることが確認できた。
得られた成果は、2021年9月と11月にオンラインとリモートのハイブリッド開催の国際会議および2022年3月にオンライン開催の日本物理学会で発表した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度もコロナウィルスの影響が継続し、令和2年度と同様に研究協力者らとの集合しての研究活動が一回しかできなかった。代替として、オンラインミーティング用ソフトウェアのライセンス契約を更新し定期的にリモート会議を行なったが、集合しての活動で得られる効果を十分にカバーするのは困難であった。また、令和3年度中に開催された国内の研究集会や国際会議へはリモート参加となり、分野を同じくする研究者らとの知見の共有や情報の交換が乏しい一年となった。
一方、令和2年度には半導体不足のために入手できなかった大容量メモリ搭載マルチコア計算機を、令和3年度の早い時期より着実に準備したことで購入することができた。これにより、計算機資源の整備は進んだ。
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| Strategy for Future Research Activity |
本研究で取り扱うファインマン・ダイアグラムのうち、4ループセルフエネルギー型はファインマン積分の次元数が高いものが多く、10次元となるものもある。我々は、4ループセルフエネルギー型ダイアグラムうち代表的で重要な役割を果たす12個のトポロジーを選択し、10次元までのファインマン積分を含んで我々の数値計算法で計算することを計画している。
令和3年度までに、12個の1／3のトポロジーについて事例計算が終了した。進行中のトポロジーも半数を超えた。令和4年度には、進行中のトポロジーについて研究を継続し、また未着手のトポロジーにも取り掛かる。世界的には、4ループセルフエネルギー型ファインマン・ダイアグラムについて、QCDプロセスを念頭にループの内線の粒子の質量が0という条件で、解析的な手法および解析的な手法と数値計算の組み合わせで積分が実施されている。我々の計算法では内線の質量によらずにファインマン積分を求めることが可能なので、4ループセルフエネルギー型の12個のトポロジーについて、質量のある場合とない場合の両方の条件で実施する。
本研究を推進するうえで欠かせない研究協力者との共同作業は、今後もコロナウィルスの影響を受ける可能性がある。そのような状況であっても、共同の研究活動により得られる効果を高めていくために、デジタル技術をさらに活用するなど一層の工夫をしていく。研究に必要な計算資源については令和3年度に整備できたので、引き続き今後もこれを大いに用いて我々の計算法の改善を進めていく。
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| Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響で、現地参加を計画していた二つの国際会議にリモート参加となったため、外国旅費を全く使用しなかった。また、現地参加を計画していた国内の学会（日本物理学会および日本応用数理学会）が主催する研究集会もリモート参加となった。さらに、研究協力者らとの集合しての研究活動も一回のみ実施するにとどまった。このため、国内旅費の使用が少なくなった。これにより旅費の使用額が低く抑えられ、次年度使用額が生じた。
令和4年度にはいりコロナウィルス感染の世界の状況が徐々に好転してきている。この状況が継続し、国際会議や研究集会に現地参加することが可能になれば、現地で成果発表を行い、そこで得られる知見を本研究に生かしていく計画である。また、研究協力者らと集合して研究活動を行う機会を大幅に増やしていく計画である。そのために外国旅費・国内旅費を使用する。
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