2020 Fiscal Year Research-status Report
核子や原子核を入射粒子とした微視的散乱理論の拡張とその応用
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20K03944
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
古本 猛憲 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (20581086)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 微視的散乱理論 / 原子核反応 / チャネル結合法 / 陽子非弾性散乱 / 偏極分解能 |
Outline of Annual Research Achievements |
微視的核子散乱模型の構築を行った。特に、局所化されたスピン軌道力ポテンシャルの構築が行えたことには意義がある。その模型を用いて、実験データが豊富に存在する炭素標的におけて、陽子弾性・非弾性散乱の計算を行った。単極子励起において、実験データをよく再現することができた。遷移密度と非弾性散乱断面積の関連性を既存の研究成果と比較し、その類似性と相違性について議論を行った。特に、陽子非弾性散乱の偏極分解能に現れる遷移密度の形状の違いについて議論も行った。これらの成果は Physical Review C に掲載された。 さらに、微視的重イオン核反応模型を用いて、核子数6の原子核散乱の計算を行った。具合的には、6He 原子核と 6Li 原子核を、それぞれ、炭素と鉛標的に衝突させた理論計算を行った。それらの原子核の双極子励起について分析を進めた。そこで、核力による励起とクーロン力による励起を分解した分析を行った。計算結果を基に、アイソスカラー型励起とアイソベクター型励起による断面積への寄与について議論を行った。それらの成果については現在投稿中である。 また、陽子非弾性散乱について、安定核で一定の成功を収めたので、不安定核への拡張を進めた。具体的には、10Be 原子核に適用した。10Be 原子核については、遷移密度を複数のパラメータで計算を行った。そして、四極子励起による非弾性散乱断面積を比較し、そのパラメータと核構造情報の比較を行っている。それらの成果については、現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記載した通り、本研究成果の一部は、一流雑誌となる Physical Review C に掲載された。この成果は当初予定の通りに進めることができた。さらに、当初計画に加えて、アイソスカラー型励起とアイソベクター型励起による分析を行うこともできた。また、不安定核への応用も速やかに進めることができ、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在執筆中の論文をさらに精査し、投稿を行う。 さらに、他の原子核においても遷移密度を作成し、陽子散乱と原子核散乱の比較を進め、その類似性と相違性について詳しく分析を行う。特に標的核や入射エネルギーによる散乱現象の特徴を明らかにし、特性を調べる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延に伴い、参加を予定していた国内で開催の学会がオンライン化され旅費が不要となった。また、海外で行われる予定であった会議はすべて延期された。そのため、令和2年度内では予算をすべて使うことができなかった。 これらの予算は次年度に繰り越し、国内での学会や会議、また、研究内合わせのための旅費に使用する。また、令和2年から続いている自粛等に伴い、個々に研究活動を進める機会が多かった。現在もオンラインでの研究打合せや研究会なども開催されているが、それらのオンラインによる実施は、対面形式に比べると詳細な議論を行うには不十分と感じる部分も多く、特に学会や研究会からヒントを得た共同研究への発展の機会は減ったと感じる。そのため、ワクチン接種の実施に伴う新型コロナウイルスの収束が十分に期待される令和4年から、これまで個別に進められてきた研究成果や手法について情報収集を目的とした滞在型研究会を行う。
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