2023 Fiscal Year Research-status Report
核子や原子核を入射粒子とした微視的散乱理論の拡張とその応用
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20K03944
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
古本 猛憲 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (20581086)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 重イオン非弾性散乱 / 密度依存性α核子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
同一の核子間相互作用に基づいた微視的核子散乱模型と微視的重イオン散乱模型を用いて、10Be原子核散乱の分析を行った。標的核は陽子と12Cを用いて比較を行った。この計算で用いた10Be原子核は、本研究期間中に構築した波動関数だけではなく、さらに、相互作用模型依存性を詳細に分析するために系統的な構築を行った。具体的には、マヨラナパラメータやバートレット(ハイゼンベルク)のパラメータなど複数ある核子間相互作用パラメータについて調べた。また、スピン軌道力とマヨラナパラメータを同時に調整することによって、基底状態のエネルギーを変えることなく、励起状態のエネルギーや原子核の性質の変更を加えた。結果、基底状態のエネルギーによる影響はほとんどないことがわかり、スピン軌道力によるクラスター構造の発展の影響が散乱断面積(特に2番目の2+状態)に顕著に現れることを示した。また、標的核依存性を分析することができ、アイソスカラー相互作用とアイソベクター相互作用の寄与について実験可能な断面積で示すことができた。 さらに、準微視的観点から新しい相互作用模型の提唱を行った。核反応模型に用いられている有効核子間力は核物質中の性質を満たすように決定されている。その性質は、飽和密度と飽和エネルギーとして知られており、多くの原子核がその性質を満たす。しかし、α原子核は、その飽和性は一般の原子核とは大きく異なることが知られている。そのため、α原子核散乱を記述するためには、汎用的な核子間相互作用は適しておらず、これまでの応用では、実験を再現するために新たなパラメータの導入などが必要であった。本研究では、このような問題を解決するために、新しいα核子間相互作用の構築を行い、準微視的観点からα原子核間相互作用の構築を行った。結果、α原子核弾性散乱をよく再現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プログラムの開発状況は順調であり、かつ、分析状況も良好であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で構築したα核子間相互作用を用いて弾性散乱だけでなく、非弾性散乱に適用する。そして、陽子と重イオンだけでなくα原子核も標的とした幅広い分析を行う。 また、それ以外の標的となる3Hや3He散乱についても応用可能かどうか分析を進める。
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Causes of Carryover |
秋の物理学会(ハワイ)が日程変更し参加できなくなったため予算使用計画に変更が生じた。 次年度は、これまでの研究成果を国内の学会等で発表するだけではなく、今後の研究の発展のため、研究打合せ旅費等に充てる。
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Research Products
(9 results)