2023 Fiscal Year Annual Research Report
Magnetotransport phenomena in QCD matter with heavy-quark impurities
Project/Area Number |
20K03948
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
服部 恒一 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (10730252)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近藤効果 / 強磁場 / ディラック粒子 / カイラル対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近藤効果が発現すると、フェルミ面近傍の伝導電子は不純物近傍に局在する。この強結合系は超伝導のように、フェルミ面近傍の伝導電子が引き起こす多体量子効果として知られている。我々は、フェルミ面を持たない系で現れる新しい近藤効果を解析した。フェルミ縮退の代わりに、強磁場下ではランダウ縮退が生じる。有限密度の代わりに強磁場を課す事で、「磁場近藤効果」が表れる。同様に、フェルミ面近傍でのクーパー不安定性の類推として、強磁場下でカイラル対称性が破れる「磁気カタリシス効果」が知られている。 本研究では、強磁場下では「磁場近藤効果」と「磁気カタリシス効果」が発現し、これら二つの効果の競合が生じる事を示した。特に、この競合によって安定な真空が入れ替わる量子相転移が起こる事を示し、臨界磁場の表式を与えた。臨界磁場より強い磁場下では磁場近藤効果が支配的になり、カイラル凝縮は磁場の強度に対して成長しなくなる。これらの結果は平均場理論に基づく有効ポテンシャルの最小点を決定する事で得られたものである。 有限温度効果についても解析を行った。磁場近藤効果がない場合は、温度の上昇と共にカイラル対称性が回復に向かい、カイラル凝縮が減少するのが通常である。磁場近藤効果がある場合、カイラル対称性が回復する前に磁場近藤効果が低温で消失する事が分かった。この磁場近藤効果の臨界温度でカイラル凝縮は競合現象から解放される。その帰結として、磁場近藤効果が消失する臨界温度の近傍では、カイラル凝縮が温度の上昇と共に増加する特異な振舞いが起こる事を示した。 量子臨界点より強い磁場下でのカイラル凝縮の飽和現象と、温度上昇に伴うカイラル凝縮の特異な増加を競合現象のシグナルとして提案した。フェルミ面を持たない磁場中の系は、モンテカルロシミュレーションの符号問題を持たないため、本研究の平均場理論を越える解析が将来的に可能であると期待できる。
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