2020 Fiscal Year Research-status Report
ハイパー核の生成・構造・崩壊の拡張殻模型による高精度分析のsd殻領域への展開
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20K03950
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
梅谷 篤史 日本工業大学, 共通教育学群, 准教授 (20454580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元場 俊雄 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (90121863)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラムダハイパー核 / 原子核殻模型 / コアの変形とラムダの軌道の分岐 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、日本の大強度陽子加速器施設(J-PARC)や米国のJefferson研究所で行われ、また、計画されているハイパー核の高精度な生成実験に対し、研究代表者らが開発した、低励起から中高励起にわたるハイパー核の微細な構造を明らかにできる拡張殻模型計算法を用いて、理論的、系統的に分析と予測を行う。4年間を通して、ハイパー核のp殻領域からsd殻領域へと研究を展開し、p軌道のΛ粒子に着目して、sd殻領域の多様なコア構造におけるp軌道のΛ粒子のダイナミクスの視点から、sd殻ハイパー核の微細な構造を解明する。そのために、エネルギーレベル、生成断面積、電磁崩壊幅を計算し、系統的な分析を行う。 研究代表者らが開発した拡張殻模型計算法は、Jefferson研究所で測定されたΛ10Beに対してすでに適用し、実験で報告された新たな状態の説明に成功している。1年目は、この方法をΛ12B、Λ11Bを中心にp殻領域のハイパー核に適用し、Λ粒子のp軌道の分岐がp殻領域でどのように変化しているのかを系統的に分析した。Λ9Be、Λ10Beにおいては、コア原子核がα-α構造と呼ばれる変形をしているために、Λ粒子のp軌道がp//, p⊥と記される二つの軌道に分岐することがわかっている。本研究によって、Λ11Bにおいても同様の分岐が起こっていること、すなわちコアに変形が起こっていること、一方、Λ12Bでは分岐が見られないこと、すなわちコアが球形に近いことが確認された。また、分岐して得られるΛ粒子のp//軌道の配位と、核構造の異なるΛ粒子のs軌道の配位とが混合するという、Λハイパー核で初めて出現する状態が多数存在することが示された。この構造は従来の殻模型計算の模型空間では記述できず、本研究で用いている拡張殻模型計算法で初めて記述できるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、本研究で開発した拡張殻模型計算法をp殻領域で質量数が9から12までのΛハイパー核に適用し、系統的に分析することがおもな目的であったため、その目的は達成されている。しかしながら、現在の社会の状況により、国際会議、国内の研究会の開催が影響を受けており、本研究の成果を会議等で発表する機会が限られていた。2021年度以降は、会議等で積極的に成果発表していく必要があると考えている。 また、2020年度末に、Λ40K、Λ48Kの理論計算に着手する予定であったが、こちらは遅れているため、研究計画全体に影響が出ないように遂行を急ぐ予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、まず、国内外の実験計画を考慮してsd殻領域の最も重い側にあるΛ40K、Λ48Kの理論計算を進め、その結果から、中性子の数が過剰なハイパー核に寄与する相互作用の情報を引き出す予定である。また、1年目で理論計算を行ったp殻ハイパー核に対して、電磁崩壊幅を算出する必要性が生じているため、並行して計算を進め、実験を行う方々に示す予定である。2年目の後半は、sd殻領域の入り口にあたるΛ19F、Λ20Neを対象に、p軌道のΛ粒子に焦点をあてて、生成断面積などを計算する。
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Causes of Carryover |
現在の社会状況により、共同研究者の研究機関を訪れての研究打ち合わせがオンラインでの打ち合わせとなり、また、成果発表をした日本物理学会2020年秋季大会、第76回年次大会がともに現地開催からオンライン開催となったため、当初予定していた出張旅費の執行ができなかったが、そのことによる研究計画の変更は生じていない。 現在のところ、2021年秋に開催される日本物理学会は現地開催の予定となっており、また、2021年度後半は共同研究者の研究機関を訪れての研究打ち合わせも可能になると考えている。前年度に執行できなかった分は、オンラインによる研究打ち合わせの頻度が上がることを考え、オンラインによるデータ共有なども含めた通信環境の整備に充てる計画である。
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Remarks |
2021年3月24日に国際セミナー「Joint THEIA-STRONG 2020 and JAEA/Mainz REIMEI Web-Seminar」にて「Structures and production cross sections of p-shell Λ-hypernuclei calculated with extended shell model」という題目で発表
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Research Products
(5 results)