2020 Fiscal Year Research-status Report
General relativistic rotating stars for evolution in the Lagrangian description
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20K03953
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大川 博督 早稲田大学, 高等研究所, 准教授(任期付) (40633285)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非線形連立方程式 / 一般相対論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では非常に長い星の進化のタイムスケールを準静的過程として追う。相対論的回転星の平衡形状そのものは2次元軸対称の仮定のもとオイラー座標、特別な角運動量分布、状態方程式にて優れた定式化がされている。オイラー座標においては質量や角運動量などの物理量が解いた結果得られるため、進化に適したラグランジュ座標で系を扱うこととするが、現状では球対称の仮定のもとでのみラグランジュ的平衡形状が定式化されていた。今年度の実績としてまずラグランジュ描像のもと定常アインシュタイン方程式および流体の静水圧平衡について解くべき変数と非線形偏微分方程式の選定が完了したことを挙げる。さらに非線形偏微分方程式は有限要素法の技術の一部を取り入れることにより、差分と同様に非線形連立方程式に帰着させられることを示した。そして当初の予定通り得られた非線形連立方程式の解法としてW4法を用いることによって、すべての方程式を満たす数値解を構成することに成功した。オイラー座標で行われる、アインシュタイン方程式とオイラー方程式を交互に解きイテレーションで収束させる方法がラグランジュ座標計算においても計算コストの面で優れていることを確認した。その上でオイラー座標で得られている解と同じ物理量を持つラグランジュ座標の星を構築し解を比較した。また、圧力が密度のみの関数であるバロトロピックな状態方程式ではない、一般のバロクリニックな状態方程式における解も構築可能であることを示しコロキウムにて成果を発表した。本研究の成果は現在論文としてまとめている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解くべき変数と解くべき方程式の選定を完了できたことは大きな一歩である。例えばアインシュタイン方程式には4つの未知関数が存在するが非自明な方程式は6つある。数学的な恒等式でそれら6つはつながっているが、解くべき方程式の選定が重要であることは一連の先行研究において指摘されていた。さらに定常オイラー方程式の角度方向の微分方程式を他の研究のように積分形式でなく微分形式のまま定式化できたことの意義は大きいと言える。これにより、既存の手法ではオイラー座標のもとですら困難であった任意の角運動量分布や任意の状態方程式のもとで平衡形状を構築できるようになった。また、偏微分方程式から連立方程式を生成する際の方法については有限差分やスペクトル展開などいくつか試し、最終的には有限要素法の技術の一部を応用できた。一方で計算機の購入を断念したため並列化についての進展はなかったものの、その中でも可能な高速化を考えNの三乗の計算コストがかかるW4の標準分解に対し、疎行列に特化した分解を考案しNの二乗の計算コストで比較的計算の重いアインシュタイン方程式のコスト軽量化を実現できた。以上の理由により、本研究は概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、得られた解の数値誤差を定量的に見積もり、実用上必要な精度と計算コストより、標準的なメッシュ数を決定する。状況によっては計算機の購入によりコードに並列化を施しさらなる高速化を目指す。次に擬似的な進化やバロクリニックな状態方程式が平衡解に及ぼす影響を調べ、より現実的な相対論的回転星の進化に向けて準備を行なう。得られた成果はその都度学会や論文で発表し、積極的に海外へも宣伝することを心がける。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行による研究室利用の制限を受け、研究室に設置する予定であった計算機の購入を見送った。また、全国的な流行を受け、出張や招聘を控えたため、予算を使用しなかった。成果報告で述べたように計算機購入を見送ったことによりW4法の並列化を断念した一方で、新たに問題に適した低コストのW4法の行列分解を発見した。この新たな手法は並列化にも向いているため、今年度は計算機を購入し計算の効率化をする。
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Research Products
(2 results)