2022 Fiscal Year Research-status Report
General relativistic rotating stars for evolution in the Lagrangian description
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20K03953
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大川 博督 早稲田大学, 高等研究所, 准教授(任期付) (40633285)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 相対論的回転星 / 非線形連立方程式 / 星の進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、超新星爆発後に誕生する原始中性子星がニュートリノ放射による冷却によって縮み、10km程度の中性子星になるまでの段階を対象とする。この段階では冷却のタイムスケールが流体のダイナミカルタイムスケールよりも圧倒的に長いため、ニュートリノ放射による組成の変化は直ちに別の平衡状態を作り出す、つまり平衡形状の進化として準静的取り扱いが可能となる。 昨年度までの研究において、既存のオイラー座標における平衡形状の構築手法とは異なり、新しい非線形ソルバー(W4法)を用いて任意の角運動量分布やエントロピー分布によるラグランジュ的な平衡形状の構築方法を提案した。そして計算コストを低減するW4法の新たな行列分解や流体の釣り合い式を効率的に解くSlice-Shooting法、進化計算に適した相対論的角運動量を固定して得られる平衡形状を具体的に示した。さらに、ニュートリノ放射がどのように平衡形状を変化させるかを相対論的な保存則から示し、既存のオイラー的取り扱いと新たなラグランジュ的取り扱いによって進化がどの程度異なるかを定量的に見積もった。以上を合わせ論文として天文系の国際誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載した。 また、新しい非線形連立方程式の解法であるW4法は、無回転中性子星の平衡形状の具体例とともに応用数学系の国際誌Applied Numerical Mathematicsに掲載することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的であった「質量や角運動量などマクロな物理量を固定したラグランジュ的な平衡形状の構築手法」を確立することに成功した。特に、回転星の流体部分を効率的に解くためのSlice-Shooting法や重力部分の計算コストを削減する新たなW4法の行列分解を提案し相対論的回転星を構築することができるようになったことを挙げる。さらにニュートリノ放射による組成の変化がどのように新たな平衡形状を作り出すかについて、相対論的な保存則をラグランジュ的に書き下し、既存のオイラー的平衡形状では扱えなかった進化がラグランジュ的に追えることを示すことができた。特にオイラー的平衡形状とラグランジュ的平衡形状の差異を定量的に評価できたことの意義は大きいと考える。本成果を天文系の国際誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載できたこと、さらに本研究で用いた新たな非線形連立方程式の解法(W4法)そのものについても応用数学系の国際誌Applied Numerical Mathematics に掲載できたことを本年度の成果として挙げる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中で提案した相対論的回転星の構築方法について、解決すればさらに効率的に研究を進めることができる課題がある。より現実的な状態方程式を用いた回転星を構築することとそのもとでニュートリノ輻射輸送を解き、より現実的な進化計算を遂行することである。本課題によってオイラー的平衡形状では事前に仮定せざるを得なかった角運動量分布やエントロピー分布が本手法によって進化の結果自然に得られることが期待される。本研究の非線形連立方程式を解く際に新たに考案した「非線形連立方程式に内在する特異点をW4法の行列分解によって回避する解法」は他の分野の研究にも活かすことができる可能性があり応用数学の論文としてまとめておきたい。
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Causes of Carryover |
本研究の目的はほとんど達成できたと言えるものの、さらに効率的な解析を遂行するためには、いくつかの追加課題が必要である。次年度使用額は本研究手法および追加課題に関する発表や論文投稿の際に利用する予定である。
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