2021 Fiscal Year Research-status Report
非線形拡散過程を考慮した銀河宇宙線太陽変調モデルの構築とその汎用化
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20K03956
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
三宅 晶子 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (00613027)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 銀河宇宙線 / 磁気乱流 / 太陽風 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、昨年度に引き続き太陽風速度の緯度依存性と非線形拡散過程を考慮した太陽圏内銀河宇宙線伝播コードの構築を進めた。また、モデルの比較のために非一様太陽風の数値モデル導入前の太陽変調モデルでも銀河宇宙線陽子、電子のエネルギースペクトルを算出し、BESS、PAMELA、AMS-02、CALETの観測結果と比較した。その結果、BESS、PAMELA、AMS-02による陽子フラックスの観測結果との比較から推定された磁気乱流の動径方向依存性は、Voyagerによる磁気乱流比の観測結果に矛盾しない値を持つことが明らかになった。また、太陽風速度の移動依存性を考慮しない太陽変調モデルでは、磁場極性が正の太陽活動期におけるエネルギースペクトルが観測よりも高い値となり、太陽圏極域における高速太陽風の影響を過小評価していると考えられる結果が得られた。この結果は本研究で導入予定の非一様太陽風の数値モデル導入の必要性を示唆する結果である。 他方、本太陽変調モデルの検証に用いたいと考えていたCALETによる低エネルギー粒子観測に関しても、2015年10月から2021年5月にわたる銀河宇宙線電子のフラックスや陽子カウントレートの解析が進んだ。CALETによる低エネルギー電子・陽子の観測結果は太陽変調の荷電依存性を明瞭に示しており、本数値計算モデルのドリフト効果の検証に有用である。また太陽活動極小期前後の太陽活動度の転換期を包含する唯一の精密連続観測データでもある。CALETやAMS-02の観測結果を用いて太陽変調の荷電依存性の検証を行った結果、本モデルによる電子および陽子フラックスの数値計算結果は観測に矛盾しない荷電依存性を示すことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度に引き続き、新型コロナウィルスの影響もあって所属先での教育活動に要するエフォートが増大しており、研究時間を確保するのが困難な状況が続いている。当初の計画ではエクストラな目標として考えていたCALETの観測データ解析に大きな進展が得られた一方で、当初の計画事項に関しては遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
精密太陽変調モデルの構築は令和4年度に完成の見込みであるが、得られたエネルギースペクトルの汎用化も残り1年で完了するのは困難と考えられる。そのため研究計画を1年延長し、令和4年度は精密太陽変調モデルの完成と物理的知見の獲得、令和5年度はエネルギースペクトルの汎用化と専用ウェブサイトの立ち上げに注力したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行により国内外学会がオンライン開催となり、旅費が不要になった。オンライン会議の宣伝効果や研究の遅れを鑑みて、参加を見送った国際会議もある。また、研究の遅れにより専用ウェブサイトの立ち上げも見送った。これらにより生じた残額は、次年度以降に実施するウェブサイトの立ち上げや国際会議参加、論文投稿料に充てる予定である。
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