2020 Fiscal Year Research-status Report
重力波の余剰な偏波の検証法の定式化と重力理論模型への制限
Project/Area Number |
20K03963
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
浅田 秀樹 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (50301023)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重力理論 / 重力波 / 宇宙物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
既に観測実績のある米国のaLIGOの2台、欧州のVirgoに加えて、我が国のKAGRA重力波望遠鏡が2020年度に国際共同観測に初参加した。これらの4台の重力波検出器を用いた新しい重力理論の検証方法を検討した。本研究は、重力波の偏波の直接測定を目指す点に特長がある。想定した天体現象は、中性子星連星のように電磁波対応天体を伴う重力波源である。従来は、4台の検出器からのデータの組み合わせでは、余剰偏波を分離して検証することは不可能だと思われていた。しかし、今年度の研究で、その重力波源が天球のある領域に位置する場合、ある種の修正重力理論が予言するようなスピン0(スカラー)偏波が仮に存在すれば、4台の検出器データのある組み合わせでは、そのスピン0成分だけを抽出可能なことを明らかにした。その具体的な条件式を厳密に導くことに成功した(Hagihara, Era, Iikawa, Asada, PRD Rapid Communication, 2020)。この成果は次の重力波の国際観測で活かされることが期待できる。また、強重力の性質を理解するため、「ガウス・ボネ定理」を用いた光の曲がりの研究も行った。ブラックホールシャドーのような天文観測では、光源や観測者がレンズ天体から有限距離に位置する。無限遠方という極限操作(理想化)を用いることなく、こうした有限距離の状況を厳密に定式化した。具体的には、有限距離の状況での厳密な重力レンズ方程式を導出した。さらに、その逐次解法を見出した。具体例として、ワイル共系重力理論における球対称解における重力レンズ方程式の逐次解を求め、銀河団スケールでの観測可能性を論じた(Takizawa, Ono, Asada, PRD, 2020a,2020b)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論研究はおおむね順調に遂行できた。しかし、Covid-19感染拡大のため、KAGRAを含む国際共同観測が予定より早く、短い期間で終了した。データ解析に関連する部分は、今年度は行わず、次年度以降への持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
実際のデータを用いた解析ではなく、次回の国際観測に備えた理論予測の計算に方針を修正する。これは理論的な研究のため、期間内にじゅうぶん対応できる。
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Causes of Carryover |
予定した研究集会が2021年度開催に延期となり、その旅費が当該年度では不要となったため。今年度に使用予定である。
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[Book] 三体問題2021
Author(s)
浅田秀樹
Total Pages
264
Publisher
講談社
ISBN
978-4-06-522844-9