2023 Fiscal Year Research-status Report
重力波の余剰な偏波の検証法の定式化と重力理論模型への制限
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20K03963
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
浅田 秀樹 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (50301023)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 重力理論 / 重力波 / 宇宙物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
NanoGravチームなど、複数のパルサータイミングアレイを用いた観測チームが、2023年6月、ナノヘルツ重力波の証拠を公表した。彼らの検出が確定すれば、その重力波の波長は数光年もの長さをもつため、パルサータイミングアレイは宇宙を探査するユニークなツールを我々に与える。なかでも、存在が示唆されている超大質量ブラックホール連星や宇宙初期のインフレーションによる背景重力波などが、そのナノヘルツ重力波の起源として有力である。しかし、超大質量ブラックホール連星からの重力波は、先行研究の多くでは、簡単のため平面波近似されていた。しかし、数十Mpc以内の比較的に近傍にある超大質量ブラックホール連星からの重力波は、波面の曲率が無視できない。この重力波の波面の曲率には、重力波からその波面までの距離の情報が含まれている。大雑把にいえば、球面の半径は、中心から球の表面までの距離だからである。そこで、我々のグループでは、近似を用いることなく、超大質量ブラックホール連星のようなコンパクトな領域から放射される長波長の重力波による、パルサータイミングの遅延を定式化することに初めて成功した(Kubo, Yamahira and Asada, Astrophysical J. 2023)。この定式化は、重力波源の方向だけでなく、そこまでの距離の効果も考慮している。したがって、我々の定式化を用いることで、原理的には、比較的近傍の超大質量ブラックホール連星までの距離をパルサータイミングアレイを用いて推定できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パルサータイミングアレイを用いて比較的近傍の超大質量ブラックホール連星までの距離を推定可能とする定式化に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究は、地球(地上の電波望遠鏡)と単一のパルサーの間の重力波の遅延効果を定式化したものである。実際のパルサータイミングアレイは、多数のパルサーの間の相関を取るものである。よって、今後、今回の成果を多数のパルサーペアを観測する状況に発展させる予定である。
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Causes of Carryover |
当初参加予定していた国際会議および国内学会の一部がオンラインもしくはハイブリッド開催に変更となり、旅費の執行額が見込みより少なくなったことが主な理由である。次年度開催予定の国際会議および学会における成果発表および研究打ち合わせ等のための出張旅費・参加費として使用する計画である。
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