2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K03965
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大栗 博司 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (20185234)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 素粒子論 / 場の量子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
大栗は、2020-2021年度には、いくつかのスワンプラン度条件を導く方法を探究した。 スワンプランド条件の重要な例である「弱い重力予想」は、0-形式の対称性と呼ばれる通常の対称性について最初に定式化され、その後n-形式の対称性についても拡張された。この予想は、n > -1の場合には、ブラックホールを使った説明があったが、n=-1の場合については成り立つかどうかが不明であった。大栗らは、アクシオンとディラトンを含む重力系について、双対性を仮定すればn=-1の場合の弱い重力予想が導かれることを示した。一方、双対性が成り立たない場合には反例を見つけた。これは、弱い重力予想は、低エネルギー有効理論から導ける条件だけでなく、双対性のような高エネルギー物理の知識を使わないと導けない例である。 最近、VafaとMcNamaraが「コボルディズム予想」と呼ばれる新しいスワンプラン度予想を提案した。この予想は、すべての超弦理論がなんらかのブレーンをインターフェースとしてつながっているというものである。大栗と高柳匡は、この予想をAdS/CFT対応の場合に検証した。特に、ゲージアノマリーや重力アノマリーが異なる値を取る理論についても、インターフェースによって結びつけることができることを示した。 大栗らは、このほか、ブラックホールの光子球面上で周回する粒子の相関関数が発散して無限大となり特異点を生み、物理的予言と矛盾するという従来指摘されてきた問題を、超弦理論の考え方に基づき光子を点粒子ではなく閉じた弦として考えることで解決できることを示した。 また、共形場の理論のもモジュライ空間上の有利点の分布を解析し、モジュライ空間上で平均された共形場とAdS重力理論の双対対応も研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大栗は、いくつかのスワンプランド条件を導く方法を探究し、弱い重力予想とコボルディズム予想について成果を挙げた。また、このほかにも超弦理論や共形場の理論の様々な側面を研究し、こうした成果もスワンプランド条件の研究に応用できると期待できる。 2020-2021年度はCOVID-19の世界的流行のため対面による共同研究は不可能であったが、Zoomなどのリモート・ツールを使うことにより順調に研究を進めることができた。また、研究成果を国際会議やセミナーなどで発表し、それについて他の研究者からの意見を聞くという重要な作業も、リモートで問題なく行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020-2021年度に成果を挙げた弱い重力予想とコボルディズム予想の理解をさらに進め、これ以外のスワンプランド予想についても、その基本原理からの導出を追求する。また、超弦理論の対称性については、最近のエンタングルメント・ウェッジ再構成法やアイランド公式、レプリカ・ワームホールなどの発達により新しい洞察が生まれている。大栗が以前にDaniel Harlowと証明した量子重力のグローバル対称性についての定理についても、レプリカ・ワームホールを使った新しい証明が見つかっている。こうした洞察を弱い重力予想にも応用することを試みる。 2020-2021年度にはCOVID-19の世界的流行により対面による共同研究や研究交流が不可能であった。一方、Zoomなどのリモート・ツールの利点も明らかになった。COVID-19の問題が解消した後も、こうしたリモートによる共同研究や研究交流の効率を生かした研究方法を進めていく。
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Causes of Carryover |
本研究の予算の大きな部分は旅費であるが、当該年度には新型コロナウイルス感染症(以下コロナ感染症)の世界的流行のため出張ができず、また共同研究者を呼び寄せることもできず、予算が執行できなかった。コロナ感染症症が収束すれば、これまでの分も含めて研究交流や研究会参加ができるようになると期待しているので、当該年度に執行できなかった分を次年度に使用するよう計画を変更した。コロナ感染症の流行がこれからどうなるかは予想がつかないが、次年度後半には通常の研究活動が回復していくと期待しており、それにより使用をする計画である。
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Research Products
(5 results)