2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K03965
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大栗 博司 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (20185234)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 共形場の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
大栗とDaniel Harlowは、2018年に量子重力理論の「完全性定理」を証明し、量子重力理論がゲージ対称性を持つ場合には、ディラック量子化で許されるすべてのユニタリー規約表現が物理的ヒルベルト空間内に実現されることを、AdS/CFT対応を使って証明した。昨年、大栗とDaniel Harlowは、この成果をさらに進めて、対称性が有限群の場合に、ヒルベルト空間の高エネルギー状態の規約表現への分解を決定した。具体的には、ユークリッド重力を用いて、ブラックホールの量子状態を規約表現に分解する公式を導いた。これは、完全性定理の有限具に関する新しい証明となる。さらに、この式が有限群のグローバル対称性を持つ任意の量子場の理論において高エネルギーで適用されることを提案し、この予想に対するいくつかの証拠を与えた。大栗は、Monica KangとJaeha Leeとの共同研究によって、この結果をさらにコンパクトなリー群に拡張する論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は、スワンプランド条件の精密化である。2018年に大栗とDaniel Harlowが証明した量子重力の完全性定理はスワンプランド条件の例であり、上記の成果はこれを精密化、定量化したものとなっている。これは、本研究の目標を大きく進めるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
スワンプランド条件の素粒子物理学や宇宙論への応用において、もっとも重要となるのは大栗とCumrun Vafaが2006年に提唱した「距離予想」と、同年に他のグループによって提案された「弱い重力予想」の二つである。この二つとも、大栗とD.Harlowが証明した量子重力理論の対称性に関する定理の自然な拡張である。したがって、大栗とD.Harlowの開発した技術は、距離予想や弱い重力予想の証明にも有効であると期待できる。今後は、この方向に向かって研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度はCOVID-19のため、出張がまったくできず、また共同研究者の旅費や会議の開催なども行えなかった。今年度は私の研究分野の大きな国際会議の開催を予定しているので、そのために使用する予定である。
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