2020 Fiscal Year Research-status Report
精密宇宙論時代における初期揺らぎの統計的性質の徹底解明と超高エネルギー物理の検証
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20K03968
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横山 修一郎 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 助教 (80529024)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インフレーション / 背景重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、宇宙論的初期ゆらぎの統計的性質(非ガウス性、統計的非等方性)に着目し、(A)様々な初期宇宙モデルにおける初期ゆらぎの生成、進化の精査(B)現在進行中、そして将来の宇宙論的観測を用いた検証についての考察を行い、インフレーション理論の解明、さらには高エネルギー物理の観測的検証を目的とする。2020年度は、(A)に関する研究を中心に実施した。結果として5本の査読付き論文を発表し、国際会議(オンライン開催)でポスター発表1件を行った。研究内容としては、まずインフレーション期にインフラトン(インフレーションを起こす場)とは別の軽いスカラー場と結合したゲージ場を導入することで、初期密度揺らぎのみならず、背景重力波にも統計的非等方性が現れることを示した。特に背景重力波のバイスペクトルに特徴的な非等方性が現れることを明らかにし、現在の観測的制限と照らし合わせることで、上記のようなゲージ場の存在に対して制限を与えた。さらに、当初の研究計画には記していなかったが2020年9月にNANOGrav collaborationが発表した、背景重力波とも考えられるシグナル検出の報告を受けて、そのシグナルが背景重力波であった場合のインフレーション模型に対する示唆をまとめた研究成果を発表した。今後の背景重力波検出とインフレーション模型の検証の際に有用となると考える。さらに、高エネルギー物理の検証という観点から、拡張された重力理論に基づくインフレーション模型についての考察も行った。特に、時空の幾何学に着目し、metric-affine幾何と呼ばれる枠組みに基づいて、スカラーテンソル理論における新たなインフレーション模型構築に成功した。発表した論文は、重要な仕事として、Europhysics Letters誌のhigh lights in 2020に選ばれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にも記した、背景重力波に現れる統計的非等方性に関する研究を論文として出版し、さらに最新の観測結果に基づく研究成果も残せた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍にあり、当初予定していた国際会議での研究成果発表や対面での研究打ち合わせが難しい状況であったが、2020年後半よりオンラインでの会議や研究打ち合わせでも遜色なく研究が遂行できる状況となってきた。今後はそのようなオンラインにも対応したスタイルで研究課題に取り組み、コロナ収束後には従来の対面での研究会出席や打ち合わせを行っていく。特に大規模構造への影響に対する数値シミュレーションは複数の共同研究者の協力が必要となるため、重きをおいて研究を進めていくつもりである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、当初予定していた出張がキャンセルとなったため次年度使用額が生じた。2021年度のコロナ禍の状況にもよるが、可能であればキャンセルとなった出張を実施し、助成金を使用する予定である。状況によっては計算機購入も考える。
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Research Products
(9 results)