2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of Nonperturbative Quantum Gravity by Renormarization Group
Project/Area Number |
20K03980
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
太田 信義 近畿大学, 理工学総合研究所, 研究員 (90167304)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 量子重力理論 / くりこみ群 / 漸近的安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
漸近的安全性による量子重力理論の定式化の物理的応用として昨年度、回転するカーブラックホールを考えると、非自明な無矛盾性条件が必要であることを世界で初めて発見し、その解として、ブラックホールのエントロピーが、ホライズン面積の関数として決まることを示し、非常に大きなクラスのブラックホール解に成立するエントロピーの公式を与えた。今年度はこの量子効果を入れたブラックホールが温度と質量などを変化させてたときどうなるかを示す層構造を調べた。また、これまで考えた量子効果ではブラックホールに存在する特異点が解消出来ないので、さらにどのような拡張を考えたら特異点が解消しうるかを考察した。その結果、ニュートン定数がブラックホールの質量にも依存する可能性を取り入れると、特異点が解消しうることを示した。この場合の量子論的なエントロピーの一般的な表式も拡張することが出来た。さらに、これまで漸近的安全性のアプローチで見逃されていた波動関数くりこみの効果を取り入れる必要があることを指摘し、それを考慮すると宇宙項の低エネルギーでの振る舞いが決まることを発見した。また、くりこみ群に現れるベータ関数の定義にいろいろな方法があるが、くりこみ項の係数から定義する方法を採用すると、ベータ関数が特定の形に制限されることがわかった。この結果は論文としてまとめているところである。これらは重力の量子論を構築する上で重要な成果と考えている。 以上の成果は数々の研究会で発表しており、今後さらに発展が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で出来なかった外国の共同研究者への訪問や、研究会に参加することが出来るようになったので、研究が進むようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
漸近的安全性により重力の量子論を構築していく上で残されている重要な問題のうち、非摂動的にくりこみ可能な理論をどの範囲にまで限ったら良いかという問題に関連して、場の再定義で除ける不要な項を取り除くことで理論がゴーストの問題なく定式化出来ることが分かってきた。ただこれは物質場がないときだけなので、今後は物質が関与するとどうなるかを調べたい。また、くりこみ群を用いて、この理論が低エネルギー現象にどのような影響を持つのかを、くりこみ群方程式を低エネルギーまで積分することにより調べたり、ブラックホールや宇宙初期の特異点に対する効果など、物理的な結果を得て、実験、観測的な予言を行い、この理論を検証することを目指す。今年度も国際研究会に参加したり、共同研究者を訪問することを活発に行い、研究を推進したい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のため、最初の2年近くまで関連する国際会議に参加したり、共同研究者を訪問することが出来なかった。次年度はコロナによる障害がかなり緩和されてきているので、国際研究会に参加したり、共同研究者を訪問することを積極的に行い、研究を推進する予定である。
|