2021 Fiscal Year Research-status Report
Hadronic interactions explored by Imaging Atmospheric Cherenkov Telescopes
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20K03985
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大石 理子 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10420233)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 解像型大気チェレンコフ望遠鏡 / ハドロン相互作用 / 宇宙線化学組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代地上ガンマ線観測装置 Cherenkov Telescope Array (CTA)のガンマ線感度曲線推定に現存のハドロン相互作用モデルの不定性が与える影響について、研究代表者を筆頭・責任著者とし、ブラジル・ドイツ・スペイン・フランスの共同研究者とまとめた論文がJournal of Physics G誌において2021年7月に出版された。解像型大気チェレンコフ望遠鏡(IACT)のガンマ線検出感度を決定する最も重要な要素は、ガンマ線と誤認された宇宙線陽子と電子由来の残存雑音量である。本論文では、宇宙線陽子と大気中の原子核の衝突によって生成される中性パイ粒子スペクトルの高エネルギー端での形状が残存雑音頻度に強い影響を与え、現存のハドロン相互作用モデル群の間で残存雑音頻度に2倍程度の大きな不定性が存在することを示した。また、この特性とガンマ線様雑音には宇宙線原子核成分のうちほぼ陽子からの寄与しかないことを利用して、IACTが宇宙線の組成不定性によらずハドロン相互作用検証において優れた性能を持つことも示した。実データを用いた相互作用検証にはガンマ線観測で得られたデータを再利用するだけで済み、専用の観測時間を割り当てる必要もないことも大きなメリットである。 ついで、現存するIACTのデータを用いた相互作用検証の検討を開始した。 使用する観測データ源としては、VERITAS (12m口径望遠鏡×4台)とCTA-LST1 (23m 望遠鏡x1台)を想定しているが、これら2つのグループの間でデータ解析のフレームワーク及びシミュレーションツールは全く異なる。効率化のためデータ解析の対象を片方に絞ることも検討したが、各々の装置構成の違いによる利点などを考慮し、どちらも解析対象として残すことにし、双方のlow-level 解析ソフトウェアの習得、実データ取得のための環境整備を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーション研究を行うに当たって必要な計算機資源については宇宙線研計算機システムが継続的に利用可能であり、大きな問題は発生しなかった。 実データを用いた相互作用検証については、通常のガンマ線解析とは異なる解析を行うため容量の大きいlow-levelデータ(データ処理の初期段階)を取り扱う必要があること、CTA-LST1とVERITASの間では使用する解析ソフトウェア、シミュレーションツールが全く異なること、などの背景事情がある。それぞれのグループのpublication policyも考慮した上で、同時進行にするべきか片方に絞るべきか、情報収集と検討にやや時間を取られた。研究をより迅速に進めるためには、一旦装置ごとに人員を分けるためのマンパワー補完も検討すべきと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、現存する望遠鏡の実データを用いたハドロン相互作用検証手法の確立のための準備研究を進める。ハドロン相互作用モデル間の差異に対して鋭敏な解析手法の開発が必要であるが、CTA-LST1とVERITASではそれぞれの装置の特性により利点・不利点が異なるため、それらを考慮に入れた解析手法を各々組み立てることを考慮中である。 また、CTAでのシミュレーション論文の共著者はそれぞれ現存のIACTグループ(VERITAS, H.E.S.S., MAGIC)にも所属しており、さらに協力を得ることで研究がより円滑に進められると考えている。
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Causes of Carryover |
申請研究費には海外旅費が含まれていたが、covid-19の影響のため観測シフト等の海外渡航を見送らざるを得ず、また参加を予定していた会議もフルオンラインに変更されたものが多かった。この海外旅費分が次年度使用額発生の主要な理由である。今年度以降は海外渡航が前年よりは容易になると考えられるので、とくに重要度の高い案件を選定した上で渡航に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)