2022 Fiscal Year Research-status Report
Hadronic interactions explored by Imaging Atmospheric Cherenkov Telescopes
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20K03985
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大石 理子 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10420233)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハドロン相互作用 / 宇宙線 / 解像型大気チェレンコフ望遠鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究の結果により、CTAが空気シャワーシミュレーション分野で使用されるハドロン相互作用モデル間の差異に対して有意な検出力を持つことを立証し、また従来から問題とされてきた宇宙線の化学組成不定性が相互作用モデル検証に対して与える影響も小さく抑える検証手法を確立した。これを受け、2022年度には既に稼働中のチェレンコフ望遠鏡の実データを用いたハドロン相互作用モデルの検証作業を進めた。 検証用の実データとしてはVERITAS(12m口径 4台アレイ、ステレオ観測)とCTA大口径望遠鏡(LST)初号機(23m口径1台、単眼観測)の宇宙線事象を使用した。ただし、この検証にとって重要な粒子識別性能については望遠鏡の台数が多いアレイの方が優れ、10年以上の科学運用実績があり装置性能が良く把握されていることから、2022年度はVERITASのアーカイブデータ解析を優先した。 VERITASデータベースを用い、相互作用検証に適した実データ群を選定した後、それらの観測時条件(天頂角・方位角・背景夜光・不良画素情報)に合わせて細かい調整を行ったシミュレーションデータを宇宙線研究所計算機クラスターを用いて生成した。また、本研究の検証のため、既存のVERITASの解析コードに改良を加えた本課題用の解析コード開発を行った。これらの準備の後、実データとシミュレーションデータを解析し、パラメータ分布の比較によって相互作用モデルの検証を行った。詳細な結果は2022年度内にVERITASの内部会議で既に報告済であるが、結果の公表は規定のcollaboration reviewの後に行う。概略としては、現状のVERITASは相互作用モデル検証に対してはCTAと遜色ない性能を持ち、30分程度の実データがあれば既存のハドロン相互作用モデル群の差異を統計的に有意に識別可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実データを用いた検証作業を開始するにあたり、CTA-LST1とVERITASのどちらを優先するか(それぞれ独立したグループであり、解析ツールやデータベースなども全く異なる)の見極め、日本側の共同研究者との役割分担の構築などに想定していたよりも時間がかかった。一方で、VERITASのデータ解析については、解析ツールが申請者が2021年度に出版した論文のCTAのフルアレイの解析ツール(LST1の解析ツールとは異なる)とベースが同じであり、開発者であるドイツ電子シンクロトロンの共同研究者(上記論文の共著者)の友好的な助力もあって、シミュレーションの部分も含めて事前に想定したよりスムーズに研究を進めることができた。このため総合的には大幅な遅延にはつながらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、VERITASがハドロン相互作用検証に十分な性能を持つことを立証し、アーカイブデータを利用することで充分なデータ量も既に確保できているので、大筋では既に確立した検証手法を踏襲しつつ、検証結果の精度に影響を与える系統誤差の影響を抑えるための解析及びシミュレーションの改善、最終的な系統誤差の精密な見積もりを行い、VERITASのデータによる研究成果の論文化への作業を進める。研究結果の公表のためには、独立した解析コードによるクロスチェック解析の確保などを求められるcollaboration reviewをクリアする必要があるため、VERITAS内部でのそれらの調整を行う。 CTA-LST1のデータ解析も(優先順位は相対的には低いが)継続する。大口径望遠鏡の単眼観測では単独のミュー粒子由来の円環パターンが非常に明瞭に観測可能であるというメリットがあり、VERITASとは異なったハドロン相互作業検証のアプローチが可能である。CTA-LST1の特性を最大限に生かした検証手法をシミュレーションから導き出し、実データに適用する形での相互作用検証を日本側の協力者と分担して進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
covid-19の状況に対応して多くの会議はオンラインのみまたはhybrid開催となった時期であり、旅費は優先順位をつけて重要な案件のみに使用し,オンライン参加で目的が果たされると判断した会議についてはそのようにして支出を抑制したためである。当該年度の旅費の一部は1月のVERITAS collaboration meeting(於アメリカ合衆国)での発表のための旅費として使用予定であったが、会議開催期が日本の新年休暇期に設定されたという外的理由で航空券価格が非常に高騰していたため有用な使途ではないと判断し、会議はオンラインで参加した上で、より航空券価格が低い時期のcollaboration meetingの方に旅費を使用することとした。なお、大型国際実験のデータを使用した結果を国際会議で発表・論文化するにはcollaboration審査を通過する必要があり、審査以前に当該研究活動および研究担当者がcollaborationに十分認知されていることが重要である。会議形式のオンライン化が進んだとしても、collaboration内部で新たに活動を始めるような場合はとりわけ、対面形式での参加で認知度を上げ他メンバーとの協力関係を構築することは実質上必要である。
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Research Products
(3 results)