2020 Fiscal Year Research-status Report
超小型衛星に搭載する膜面型ダストセンサシステムを用いたβメテオロイド観測
Project/Area Number |
20K03991
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
石丸 亮 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 主任研究員 (10573652)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ダストセンサ / 宇宙塵 / ベータメテオロイド / 超小型衛星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が観測を目指すβメテオロイドは太陽系の内から外へ定常的に物質を輸送する主要なプロセスの一つであるため、惑星系の物質輸送において重要である。研究代表者らが独自に開発する膜面型ダストセンサシステムの検出原理は、宇宙塵がポリイミド膜に衝突することで発生する弾性波を膜面上に配置した圧電素子群により電気信号に変換し、衛星搭載エレキによって信号処理することで、粒子の衝突として検知するものである。令和2年度は、センサの制御・信号処理をするエレキの設計とその最適化を行った。圧電素子が出力する電気信号をプリアンプで増幅した後に、圧電素子とポリイミド膜の組み合わせで決まる共振周波数200kHz付近のみをバンドパス抽出し、さらにこのアナログ信号波形をデジタル信号として取得するためサンプリングレート10MHzでサンプリング可能なADコンバータによりサンプリングし、最終的にサンプリングした波形の処理をFPGAで行う構成とした。本センサシステムの設計最適化のために、大阪大学の静電加速器を用いた宇宙塵衝突模擬実験を行った。この実験により膜面型ダストセンサに粒子を衝突させ、センサ感度に影響する因子(プリアンプ定数、バンドパス定数など)を調整し高感度化することで数pg・km/sの運動量の粒子を検出できる感度を達成した。検出された運動量はサブミクロンからミクロンサイズのβメテオロイドで想定される運動量として想定されるため、本システムが目的とするβメテオロイドを観測するのに必要な感度を有することが示された。加えて、パルスジェネレータを用い、エレキの入力部にダストイベントと等価な疑似信号を印加し、プリアンプのリニアリティとダイナミックレンジを測定した。線形性が確保される条件でダイナミックレンジが70程度と運動量の広い範囲で粒子の測定が可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、膜面型ダストセンサシステムのエレキの最適化により、βメテオロイドを観測するのに必要な感度を有する設計を実現したため。
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Strategy for Future Research Activity |
膜面型ダストセンサシステムをを惑星探査研究センター超小型衛星プロジェクト2号機ASTERISCに搭載するための開発を継続する。ASTERISCはJAXAイプシロンロケットにより2021年度以内に打ち上げられる予定である。打ち上げ後は実際の軌道上で宇宙塵の観測運用を実施する計画である。
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Causes of Carryover |
本センサシステムの設計最適化のために、当初の予定では、米国コロラド大学の静電加速器DALを用いて宇宙塵衝突模擬実験を実施する予定であった。ところが、コロナ禍のため渡米できなかったため、代替策として国内の大阪大学の静電加速器による実験と、パルスジェネレータによる疑似ダストイベント信号を用いた実験を実施し、エレキの最適化を行った。これにより、米国への渡航費の執行ができなかった。本来の目的は達成されたが、DALの方がより高エネルギー・高速度の粒子を生成させ衝突実験を実施できるため、渡航が可能となり次第、執行できなかった予算を用いて追加の較正実験を計画している。
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Research Products
(2 results)