2021 Fiscal Year Research-status Report
プリンタブルエレクトロニクスを用いた放射線飛跡検出器の高機能化技術開発
Project/Area Number |
20K03994
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
庄子 正剛 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 技師 (50646718)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | プリンタブルエレクトロニクス / 印刷技術 / 放射線飛跡検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プリンタブルエレクトロニクスを用いた検出器信号処理集積回路の高密度実装技術の開発を行い、高密度・高性能放射線飛跡検出器開発に向けた原理検証を行う。近年、印刷技術の発展は目覚しくサブミクロンにも及ぶ描画精度の向上と様々な印刷技術の開発が進み、絶縁体へのフレキシビリティが高く、かつ高精細な金属配線の形成が可能となった。これらの印刷技術の発展により、高精細金属配線がウェアラブル端末等に使用され始めている。この印刷技術を用いて、信号処理集積回路一体型2次元放射線飛跡検出器を作成し、プリンタブルエレクトロニクスによる集積回路実装技術の検証と検出器の性能評価を行い、放射線飛跡検出機の高機能化技術を確立させる。 当該年度には、検出器への応用に向けて、集積回路実装基板の開発と金属配線印刷用スクリーン版の製作を行なった。当該年度に行った印刷試験には、1mm角,パッドサイズ55μm角, パッド間隔10μmピッチの集積回路を用いた。この集積回路を用いた理由は、テクノロジーの発展により狭ピッチ化が進む集積回路の電極に、我々が開発しているプリンタブルエレクトロニクスが適用できることを確認することにある。 この集積回路を用いて印刷による実装ができれば、種々の集積回路に対して汎用的に印刷技術を用いることが可能となるため開発中である高密度実装技術の応用の幅が広がる。本年度の印刷実装試験では配線幅50μm,線間15μmの狭ピッチ極細線金属配線を印刷できることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は検出器への応用に向けて、集積回路への微細金属配線(線幅50μm、線間15μmの極狭ピッチ金属配線)の印刷と約200μmの段差の乗り越え印刷が同時に達成されることを検証する試験を行った。年度前半には線幅50μm、線間15μmの極狭ピッチ金属配線の印刷試験を行い、平面の印刷対象に対して、再現性良く微細印刷配線が形成できることを確認した。この実験結果は日本物理学会秋季大会において学会発表を行った。 極狭ピッチ配線の印刷が可能であることが分かったので、年度後半に集積回路の段差乗り越えと微細金属配線印刷の同時達成を目指した試験を行なった。その試験中、印刷配線が10μmほどズレて印刷されるという問題が判明したため、このズレの原因究明を行なった。本研究では微細金属配線を扱うため、10μmのズレが大きな問題となり得る。この印刷のズレの検証を行ったところ、ズレにも再現性があることが判明した。さらに調査を進めた結果、印刷機が金属配線を印刷する際に、対象物(今回は評価基板)を10μm程度動かしてしまっていることが分かった。そこで、次年度、検出器制作に向けて、評価基板を固定するための治具の作成を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度では、年度前半に、昨年度に得られた知見をもとに印刷精度の向上や印刷工数の簡素化に向けた改良を行う予定である。改良の具体的な内容としては、実装基板と印刷機との相対的な位置調整をより簡単かつ精密に行うための新しい治具を設置する。これにより、極微細金属配線のズレを抑制して印刷でき、印刷精度の向上も期待できる。固定方法を改善して集積回路の実装試験と検出器化を進める。 年度後半では、印刷配線を用いて作成した放射線検出器の性能評価を行い、前期で行った試作試験の結果と検出器化に関する研究開発について各種関係学会で発表を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度は、前年度に判明した実装基板とスクリーン版の改善を行った。しかし、本年度の試験において、印刷時に実装基板の固定方法に課題があることが判明した。この試験結果をフィードバックした治具の作成と検出器開発に向けた試験が必要と判断し、これらの製造と試験を次年度行うこととした。 次年度の使用計画としては、改善した実装基板固定方法を用いて、極狭ピッチ印刷金属配線(ライン幅50μm/スペース幅15μm)の作成を行い、この配線を用いた検出器用読み出し基板の制作と試験を行う。
|