2021 Fiscal Year Research-status Report
High-precision electron scattering experiments for the advancement of the physics of unstable nuclei
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20K04001
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
栗田 和好 立教大学, 理学部, 教授 (90234559)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 安定核電子散乱実験 / イオントラップ / イオン分析器 / EXBフィルター / SCRIT / 電極分割 / マイクロチャンネルプレート(MCP) / 多価イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナ感染症の影響で当初目的であった開発が思うように進まず、トラップ終了後に残されたイオン分布の分析を行うことにより電子散乱に寄与する標的原子核の数を抑えるイオン分析器の分解能向上のためのR&Dを目指す軌道修正を行った。 イオン分析器は電磁場を通過した後のイオンの到達点により質量電荷費を予想するシステムであるが、現状6mmごとの区画でしかイオン検出ができないため、特に多価のイオンの分離不能が生じてしまっている。そこで、分析可能なイオンの価数を+20価までに設定したうえで、MCPイオン検出器に分割電極読みだしを組み込むことにより位置分解能を2mmにまで向上させる開発を行った。 電子回路の基板製作サービスを使って2mm間隔のストリップ電極を準備しMCPの読み出し電極と交換することで、イオンの検出信号を十分読み出せることを実証することに成功した。しかし、電極間の隙間が狭いためにヒットしたチャンネルの隣にも信号が見えてしまうクロストーク問題が発生した。そのクロストーク実測では真の信号に似た波形が最近接ストリップに確認できるもののヒットチャンネルに比べ25%程度の波高であることが分かり、真のヒットとクロストークの波高弁別が可能であることも示すことが出来た。 2021年度も引き続き新型コロナ感染症の影響で研究室の滞在時間が短くなり、検出器に接する時間が限られ、開発の遅延の原因となった。その中でも新たに作成したストリップ電極読み出しの試行を完了した。また、イオン分析装置の有感領域である240x15mmを極力覆うMCPの入手を考え、イオンがほとんど到達しない場所にギャップをもうけ,100x15mmの矩形MCPを2つ組み合わせて測定が可能であることを見出し、センサーの発注を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年、2021年度ともにイオン分析器のアップグレードに必要なイオン検出部の製作を行う予定であった。しかし、コロナ対策のために大学への入構が制限されたり、研究生の行動が制限されていたために、その設計を決定するために必要な実験結果を得ることが出来ず、年度内は装置の動作特性を知るための基礎測定にとどめざるを得なかった。センサーの配置の検討を行い、発注は行ったものの、真空槽に設置するためのフランジの設計及び作成が最終年度である2022年度までずれ込んでいる。以上のことから「区分(3)やや遅れている。」を選択した
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もコロナ対応のためにアップグレードのための装置製作を行うことが出来ずおよそ半年の遅れが生じている。本研究の主たる目的を達成するには開発と検証実験のスピードを上げていく必要がある。 まず、①イオン分析装置のアップグレードを行いトラップ領域から排出されてくるイオンの内訳を詳細に追う事を目標にする。上方にあるSCRITのトラップ領域から導かれてトラップ領域に一時とどまったイオンは、出射時は17°deg. deflectorによって下方へ導かれる。標的イオンのトラップ中にはまわりの残留ガスもイオン化されて取り込まれ、出射時はそれらが混合したイオン流になる。その出射イオン流に電場Eと磁場Bをかけることによりイオン種の分析を行う。電荷質量比による曲げ角度の違いから、最下流に位置感度のあるイオン検出器を敷き詰めておけば、その検出場所からイオン種の区別を行うことができる。そのイオン検出器には現在位置分解能が6mmのチャンネルトロンを使用しているが、読み出し電極分割型のMCPで2~3 mmの位置分解能にするとともに磁場の増強をしてイオンの分析能の飛躍的改善をはかる。このアップグレードによりトラップされたイオン数を5%以内の誤差で測定できると推定している。 ①の成果が不十分と判明した場合は②反跳核検出器の検討を行う予定であるが、基本的には3年目の2022年度は①②の装置を系統誤差の理解にあてる。同時に物理データ取得も可能で、準備が整えば10日ほどで1核種の測定が完了する。加速器の稼働時間が6カ月間と考えると、生成率によるが132Sn周辺の10種以上の核種の測定ができることが期待される。
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Causes of Carryover |
イオン分析器の心臓部となるセンサーの発注を2021年度に行ったが、納品が間に合わず140万円の支払いが2022年度にずれ込んだ。センサーを真空槽に取り付けるための真空うフランジの加工に残額120万円で行い、センサーを設置したのち、イオンの検出試験を実施する予定である。
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Remarks |
Kazu Kurita's Home Page http://www.ne.rikkyo.ac.jp/~kurita/
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