2020 Fiscal Year Research-status Report
Search for the K-pn bound state, the isospin partner of the K-pp
Project/Area Number |
20K04006
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐久間 史典 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (10455347)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | K中間子原子核 / K-pn / K-pp / 中性子検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、反K中間子と核子2個が束縛したK中間子原子核「KbarNN」束縛のうち、K-pn束縛状態(我々の発見したK-pp束縛状態のアイソスピン・パートナー)を探索し、K中間子原子核の構造を明らかにすることを目的とする。 本年度は、既存のE15実験データを用いて、K-pn->Λn崩壊の解析を進めた。薄いシンチレーターを用いた中性子の検出を目指しているが、これまで申請者達が行ってきたK-3He->π±Σ干pn反応におけるΣ±->π±n崩壊の解析と異なり、中性子単体の終状態検出ではバックグラウンドに埋もれてしまい、解析に工夫が必要なことが明らかになった。この点に関しては、引き続き調査中である。なお、K-3He->π±Σ干pn反応中におけるΛ(1405)pn終状態に関する論文は、最終的な改訂を行っており、近日中にサブミット予定である。 また、次世代の実験に向けたプラスチック・シンチレーターとMPPCを用いた汎用性の高い中性子検出器の開発を進めた。本年度は、小型なMPPC・読み出し(プリアンプ)回路一体型基板の試作を行い、その動作確認を行った。この回路は、現在よく使用しているPMTをそのままの形で簡便に置き換えることを目指している。特に磁場中での限られた空間における使用を目指しており、これまでのPMT読み出しでは実現が不可能であったフレキシブルな検出器設置を比較的低予算で可能とすることが目標である。 次世代実験に関しては、K中間子原子核の系統的調査を目的とした新規実験提案をJ-PARCに提出し、E80実験としてstage-1 approvalを得た。E80実験では、最初のステップとして、4体のK中間子原子核であるK-ppn束縛状態をΛd崩壊を通して探索することを目指す。本研究で開発している中性子検出器は、E80実験セットアップの前方・後方中性子検出器として用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、既存のE15実験データの解析、MPPCを用いた汎用中性子検出器のための読み出し基板試作、新規実験提案(J-PARC E80実験)のstage-1 approvalと、概ね計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き以下の調査を進める。 まず、既存のE15実験データを用いてのK-pn探索は、前年度見つかった問題点を回避するために、そのΣ-p崩壊に着目する。Σ-のπ-n崩壊は既存のデータで見えているために、バックグラウンドを評価した上でpとの組み合わせを解析していく。予想される統計数は少ないが、Σ-p不変質量中にΛp不変質量中で見えたピークと同様なスペクトラムが見えれば、K-pn束縛状態の初めての検出となり、KbarNN束縛状態の存在を一層確かなものにすることが出来る。 プラスチック・シンチレーターとMPPCを用いた汎用性の高い中性子検出器の開発においては、前年度に作成した試作機を宇宙線やJ-PARCで実際のビームを用いたテスト実験を行うことにより、時間分解能等の基礎的な性能評価を進める。開発した検出器を用いてE80実験の早期実現を目指す。さらに、E80実験セットアップでK-pn束縛状態を探索可能かどうかの検討も進めていく。現在、新しい検出器である陽子偏極計を用いたK-pp束縛状態のスピン・パリティー決定に向けた新規実験の検討が進んでおり、次世代K中間子原子核実験の多角的な検討を展開してゆく。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた検出器の試作機開発が順調に進んだため、次年度使用額が生じた。 繰り越し分は、引き続き次年度に行う測定器開発や、成果発表のための旅費等に用いる計画である。
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Research Products
(6 results)