2020 Fiscal Year Research-status Report
Revealing the ICM physics by joint analysis of SZ effect and X-ray imaging with high angular resolutions
Project/Area Number |
20K04012
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡部 信広 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (00436073)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 銀河団 / 銀河団ガス / スニヤエフ・ゼルドビッチ効果 / X線 / 弱い重力レンズ効果 / 多波長ジョイント解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
グリーンバンク望遠鏡/MUSTANG-2の高角度分解能のスニヤエフ・ゼルドビッチ(SZ)効果データとXMM-NewtonのX線データ、そしてすばる望遠鏡ハイパーシュプリームカム(HSC)の光学撮像データと弱い重力レンズデータ、インドGMRTのシンクロトロン放射のデータを組み合わせた究極的な多波長研究を行った。 高角度分解能のSZ効果とX線データを組み合わせることによって、SZ効果の温度と密度の縮退が解け、高い空間分解能で銀河団ガスの温度、密度、圧力分布を明らかにすることができた。特に1次元動径プロファイルによるフィッティング方法と、2次元データによるフィッティング方法を開発した。1次元手法は中心部の細かな構造を明らかにすることができ、2次元手法では複数のガス成分とその中心位置を同時に決定できる。これらは相補的な手法となっている。 この研究手法をHSCで発見された3つの銀河団で行った。一つの銀河団では激しい銀河団衝突によって、温度やSZ効果のパラメータが大きく上昇する様子が明らかになった。重力レンズ質量分布はダブルピークを持ち、SZ効果分布は重力レンズピークと一致しているが、X線では重力レンズピークの片方だけにコアが見られた。また、激しい銀河団衝突によって相対論的電子が作られると予想されるが、広がったシンクロトロン放射を発見できなかった。これは相対論的電子の加速効率が理論値よりも小さいことを意味する。また、別の銀河団ではSZ効果とX線データと動径平均プロファイルの差分から、ガスが摂動を受けている様子を捉えた。摂動を引き起こしているサブハローの候補を銀河分布から発見した。 銀河団の力学状態によって質量から期待される温度やSZ効果パラメータがどの程度変化するのかの制限を行った。またシミュレーションとの比較を行い、観測結果と理論が一致することを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
SZ効果とX線を組み合わせた解析手法を2つ確立させた。加えて、重力レンズ、光学撮像、電波シンクロトロン放射のデータを組み合わせて、銀河団の力学状態と銀河団ガスの関係について統一的な描像を調べる手法を確立させた。 グリーンバンク望遠鏡のプロポーザル2件(3天体)が採択された。しかしながら観測条件の問題から観測されなかった。XMM-Newtonのプロポーザル3天体が採択された。今後のデータ取得も順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
さらなるデータ獲得を目指す。 アーカイブ化したACTPolのSZ効果のサーベイデータ(分解能1.4分)は大きいスケールのSZ効果データをもたらす。半径1.5分以上の高角度分解能SZ効果のデータが有効性が低いため、大きい領域の低角度分解能データと小さい領域の高角度分解能を組み合わせて、銀河団ガスの外側パラメータの制限の向上を目指す。 今年度確立した手法は、3次元球対称モデルに基づくものであったが、銀河団衝突によるガス物理量の変化は、非球対称モデルが期待される。今後は複雑な温度構造にも耐えうる非球対称モデルの確立を目指す。
|
Causes of Carryover |
新型コロナパンデミックのために、旅費を使用する機会がなくなった。今後パンデミックの推移を見て旅費使用の模索をする。
|