2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K04016
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
加用 一者 東京工科大学, 教養学環, 教授 (80377928)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重力レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はHSCデータを用いて3つの手法 (手法1. SQLS/BQLSの候補へのHSCのデータを用いた調査, 手法2. 目視による探査, 手法3. 機械学習による探査) により重力レンズクェーサーを探査する研究計画である。このうち手法1については,2021年度中に完了している。 手法2については, 共同研究を通じて二つの成果を得た。一つ目は,銀河によってその背景銀河が重力レンズ効果を受けている系を探すもので,2319個の候補天体を目視により分類し,8個の高確度 (および28個の中確度,138個の低確度) の候補天体を発見することができた。この成果は論文として発表した。二つ目は,銀河によってその背景のクェーサーが重力レンズ効果を受けている系を探すもので,6199個の候補天体を目視により分類し,73個の高確度 (および17個の中確度,53個の低確度) の候補天体を発見した。この成果は論文として投稿中である。 また,目視による探査では,クェーサーがレンズ天体となり遠方のクェーサーを複数に見せているかもしれないという極めて興味深い天体を一つ発見していた。この天体については,2021年度にジェミニ望遠鏡Fast Turnaroundプログラムでの追観測が採択されたが,望遠鏡の故障という不運もあり,観測は実施されなかった。2022年11月の公募に再応募し,再び採択され,2023年1月に観測が実行された。詳細の分析は現在進行中であるが,初期分析によれば,極めて残念なことにこの天体は重力レンズではなかったようである。 手法3については, 従来の自作の機械から,より高度で汎用性の高いフレームワーク (PyTorch) への移行を完了した。模擬データを用いた試験によって性能の良さが発揮されていることがわかったが,模擬データをより本物らしく作らないといけないことが,改めて浮き彫りとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
手法1は完了し,手法2も着実に成果を上げているが,手法3が大きく遅れているために「遅れている」と自己評価をした。 特に,機械学習に必要な訓練データを模擬的に生成する部分が不十分であるために,実際に重力レンズクェーサーを探す段階に達しておらず,必要な計算機を購入するところまでに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,遅れている手法3について,重力レンズクェーサーの模擬データの生成方法を集中的に探究する。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は大きく2点ある。 1点目は機械学習を用いた探索の進捗が遅れ,そのための計算機を購入するところにまで至っていない点である。昨年度からの改善点は,採用する機械を高性能のものに置き換えたことであるが,このことにより,機械の性能というよりも,訓練データ (擬似データ) の質のほうが重要であることがより鮮明になった。今年度は擬似データの生成に注力して,専用計算機の購入 (150万円程度) と,2020年度に購入したPCクラスタの増強 (50万円程度) を行う計画である。 2点目は,コロナ禍により国内外の研究会がオンライン化され,旅費を必要としなくなった状況が続いている点である。対面での研究会も徐々に復活しつつあるが,いずれも関東圏で開催されるものであったため,旅費を必要としなかった。今後も研究会の開催形式は不透明である。しかし,対面での議論,交流の質は,オンラインでは置き換えられない,ということもこの数年で判明したことである。今年度は成果発表の機会が増え,旅費を適切に執行できることを期待したい。
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Research Products
(2 results)