2020 Fiscal Year Research-status Report
長波長中間赤外線用光学フィルタの実現によるOH/IR星の質量放出現象の直接観測
Project/Area Number |
20K04023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上塚 貴史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30613509)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中間赤外線 / 光学フィルタ / メタルメッシュフィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、長波長中間赤外線(波長:25-40ミクロン)向けの高効率・高強度の光学フィルタを開発・実用化し、OH/IR星と呼ばれる進化末期星の質量放出現象の解明を目的とした、長波長中間赤外線における高解像度撮像データの取得の実現を目的としている。この目的のため、光学フィルタの設計と製作、観測装置への搭載、およびこれを用いたOH/IR星の観測の実施を計画している。令和二年度は光学フィルタの設計と製作開始を計画していたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて活動が難航し、搭載予定の観測装置の開発も遅延したため、光学フィルタの設計に注力した。 本研究で開発する光学フィルタは「メタルメッシュフィルタ」と呼ばれる種類のフィルタで、周期的に微細な穴構造を配置した金属薄膜が示すバンドパス特性を利用するものである。このフィルタは長波長中間赤外線用の光学フィルタとして高い有効性を持つが、本研究ではこれをシリコンの内部に配置した「サンドイッチメタルメッシュフィルタ」を開発し、高効率かつ高強度のメタルメッシュフィルタの実現を目指している。このようなフィルタが実現できれば、将来の大型観測装置や宇宙観測機器への応用の道が拓くことができる。 フィルタの設計には、メタルメッシュフィルタの穴構造のサイズや間隔を適切に設定することが重要となる。また、シリコン表面にも反射防止のための微細周期構造を形成する必要があり、その周期やサイズを適切に設定することも重要となる。これらの設計は厳密結合波解析法や時間領域差分法といった電磁界シミュレーションが必要となるが、これを行うための計算環境を整備し、観測予定である波長31.8、37.5ミクロン用フィルタのための設計解の詳細化を進めた。今後これらの設計に基づいたフィルタの製作を進め、フィルタの実現・観測応用を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和二年度は新型コロナウィルス感染拡大に伴う活動制限の影響を受け、開発が遅延した。特に光学フィルタの搭載を予定している観測装置(東京大学アタカマ天文台6.5m望遠鏡用中間赤外線観測装置MIMIZUKU)が遅延したため、開発活動再開に向けて、光学フィルタの設計活動と、光学フィルタの試験および観測装置開発のための準備に注力した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度に予定していたフィルタの製作活動を令和三年度に進める。観測装置の整備はこれと並行して令和三年度に進め、フィルタの搭載のために必要となる金属加工なども実施する。観測装置へのフィルタの搭載と観測応用は令和四年度に実現し、OH/IR星の観測もここで実現する。
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Causes of Carryover |
光学フィルタの開発活動の遅延にともない、令和二年度に予定していた光学フィルタの製作を令和三年度に実施することとなったため次年度使用額が生じた。使用予定は元の予定と同様に、光学フィルタの製作に使用する予定である。
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