2022 Fiscal Year Research-status Report
ALMAで探る大質量星形成領域における窒素を含む複雑な有機分子の起源
Project/Area Number |
20K04025
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
酒井 剛 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20469604)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 星形成 / 大質量星 / 星間分子 / ALMA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大質量星形成の極初期段階にあると考えられる天体、および比較的進化の進んだ天体をアルマ望遠鏡で観測し、その化学組成を明らかすることで大質量星形成領域における窒素を含む複雑な有機分子の起源を解明する。2022年度には、アルマ望遠鏡による観測が一部実施され、赤外線暗黒星雲の新たな観測データを得ることができた。特に、G14.492-00.139の分解能0.3秒角程度の高分解能観測データから、これまで見つかっていなかった分子流の存在が明らかになるなど、新たな知見が得られている。今後、詳細な解析を行うことで、大質量形成初期の星形成の物理的、化学的性質を明らかにする予定である。 また、アルマ望遠鏡で観測された比較的進化の進んた大質量星形成領域の観測データについて化学組成の解析を行なった。その結果、大質量星形成領域の化学組成に多様性があることが示唆される結果が得られた。窒素を含む複雑な有機分子であるC2H5CNと酸素を含む複雑な有機分子であるHCOOCH3のメタノールに対する存在量を天体ごとに比較すると、HCOOCH3の存在量のばらつきは大きくないが、C2H5CNの存在量はばらつきは比較的大きいことがわかった。また、メタノールの重水素濃縮度にばらつきが見られ、大質量星形成の初期状態に多様性があることを示唆する結果が得られた。今後、さらに解析を行い、大質量星形成における化学組成の多様性の起源を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルマ望遠鏡の新たな観測データが得られ、観測データから新たな知見を得ることができている。さらに、これまでの大質量星形成領域の観測データの解析から、重要な結果が得られており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
アルマ望遠鏡によって得られた赤外線暗黒星雲の高分解能観測データを解析し、大質量星形成極初期段階の原始星周囲の化学組成について明らかにする。特に、高温領域の広がりや、分子流が化学組成に与える影響などを調べる。また、比較的進化の進んだ大質量星形成領域の化学組成について、特に、窒素を含む有機分子と酸素を含む有機分子の存在量のばらつきについて、定量的に評価する。また、メタノールの重水素濃縮度の違いの要因について、温度や距離の影響などを考慮し、検討する。以上から、大質量星形成領域における、窒素を含む複雑な有機分子の起源を明らかにする。
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Causes of Carryover |
アルマ望遠鏡のデータ解析を2022年度に行い、論文としての成果報告は2023年度に行うこととしたため。
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Research Products
(1 results)