2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on solar activity and its influence on Earth's environment using data over a century
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20K04033
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
櫻井 隆 国立天文台, 太陽観測科学プロジェクト, 名誉教授 (40114491)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 太陽 / 太陽黒点 / 太陽フレア / 太陽の周期活動 / 太陽活動の地球影響 / 太陽の長期変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
140年以上にわたる太陽黒点面積のデータ(データの提供元は英国グリニッジ天文台と米国・海洋大気庁(NOAA))を統計的に解析し、天文学会年会(2022年3月)において発表した。面積の分布関数がべき乗分布であれば、どんなに大きな黒点も長く待ちさえすれば現れることになるが、現在までのデータですでに、べき乗分布より急速に減少する、指数関数的振る舞いが見えている、という結果である。言い換えれば、太陽黒点の大きさには実質上上限があり、いくら待っても超巨大黒点は現れ得ないということになる。一方、太陽表面に同時に存在する黒点の総面積は、個々の黒点が超巨大でなくても、黒点の寿命が長ければ大きくなる。これは、太陽類似星で観測されている超巨大フレア、超巨大黒点が、活発な磁気活動の他に、黒点の散逸過程が抑えられていれば実現しうることを示唆している。これらを主張した論文をAstrophysical Journal誌に投稿し、査読結果を待っている状況である。 同様の解析は太陽フレアのX線観測データについても行なった。フレアのエネルギー分布は、エネルギーの小さい側では、太陽コロナの加熱機構についての所謂ナノフレア仮説に関連して議論されてきたが、近年では宇宙天気予報における極端現象への関心の増加から、大フレアの発生頻度が注目されている。今回、X線フレアについても、分布関数は大エネルギー側ではべき乗分布より急激に減少している、即ち太陽フレアにも規模の上限がある、という結果を天文学会年会(2021年9月)において発表した。しかし大フレアの場合は検出器の感度飽和によりX線強度が過小評価されている可能性もあるので、この点を注意深く検討の上、論文を準備する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データの解析と研究は予定よりも順調に進んでいる。研究の過程で新たなデータの存在がわかり、新しい研究テーマを見いだすことができた。 一方、新型コロナウイルス感染症の影響により、密を避けるため、対面での研究打ち合わせ、議論の機会は激減した。また予定していた出張は国内、国外ともできなかった。初期成果の発表を予定していた「ひので」衛星国際会議は、2021年10月に第14回がオンラインでの開催となり、第15回についても、2022年9月にプラハで対面での開催が予定されているものの、実現ないしは渡航の可・不可について先が見えない状況である。 以上を総合して、状態は(3)やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
太陽フレアのエネルギー頻度分布については解析がほぼ終わっており、論文にまとめる。プロミネンスの極移動についてもデータのデジタル化は終了したので、解析を進める。 外国出張、特に観測装置を置いている中国雲南省への出張については、年度前半に実施できない場合は、リモート会議により最低限の現状把握と今後の方針検討を行う。初期成果の発表を予定していた「ひので」衛星国際会議(通算第15回)についても、【現在までの進捗状況】に述べたように、2022年9月にプラハで対面での開催が予定されているものの、オンラインとなる可能性がある。 国立天文台で長期間にわたり蓄積してきた太陽黒点数のデータについては、2015年に国際太陽黒点相対数の定義の大改訂が行われたあと、これに対応する確定値を出版していなかった。我が国における他の太陽活動データの基礎となるものなので早急にとりまとめて出版する。また、この研究調査の過程で、約100年間にわたる日本国内の研究機関やアマチュア天文家の黒点観測データをとりまとめたので、これを元に日本版の統合黒点数データを作成して、本研究課題の総まとめのひとつとしたい。
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Causes of Carryover |
データ保存のため、随時ハードディスクを購入してきたが、2021年末から2022年初にかけて電子機器類の納品遅れが目立ってきたため、2022年4月以降に発注することとした。現在まだディスク容量には余裕があるので問題ない。
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