2021 Fiscal Year Research-status Report
太陽系創世記解明のための超高精度局所U-Pb年代分析法の開発
Project/Area Number |
20K04040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河井 洋輔 大阪大学, 理学研究科, 助教 (90726671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 順 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (90452424)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 2次イオン質量分析計 / レーザーポストイオン化 / 局所同位体分析 / 太陽系年代学 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来よりも高精度の局所 U-Pb 年代分析を行うことを目的に、2次イオン質量分析計(SIMS: Secondary Ion Mass Spectrometer)の高感度化を狙い、1次イオンビームによってスパッタされた試料を、高出力レーザーによってイオン化する2次中性粒子質量分析計(SNMS: Secondary Neutrals Mass Spectrometer)の開発を進めている。 現在までに開発された分析システムで、U-Pb年代分析で主として用いられる鉱物、ジルコンおよびアパタイトの標準試料について、鉛同位体比の分析を行った。結果、高出力レーザーによるポストイオン化によって、1μm以下の分析領域から数ppmオーダーの鉛を検出することに成功した。しかしながら、試料表面の観察から、イオンビーム照射で消費された試料のうち、何%がイオンとして検出されたか (useful yield) を見積もったところ、0.5%以下となり、これは従来のSIMSと同程度の値であった。 得られた鉛同位体の質量スペクトルからPb-Pb年代分析を行った結果、得られた年代値は標準試料の文献値と大きく外れた。同位体比から、現在の地球の安定同位体比をもつ鉛の混入があることが分かったため、分析前の試料表面をイオンビームの走査によってスパッタし、試料の汚染を取り除く実験を行った。結果として、鉛の混入は試料のイオンビーム照射による帯電を防ぐために行った金コーティングに起因することが分かり、その影響を取り除く条件を精査した結果、分析誤差の範囲内で、標準試料の文献値と一致する鉛同位体比を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響で物品の調達に支障があり、手持ちの部材で実験を進めることを余儀なくされた。また長期に渡り装置にアクセスできない期間が生じたため、実験装置の不具合が頻発し、その対処に追われた。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で述べたように、分析誤差の範囲内で、標準試料の文献値と一致する鉛同位体比を得ることに成功した。しかしながら、useful yieldは従来のSIMSと同程度の値であり、本装置の特性上、この条件では分析誤差は大きくなってしまう。装置の更なる高感度化が必要である。 そのため本研究課題の本来の計画通り、レーザー光学系の再検討を行う必要がある。具体的には、光学素子を真空チャンバー内に入れることを設計条件に組み入れる設計とする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で研究の遂行が大きく阻害された。また学会参加についてもオンラインでの開催のため、旅費という概念がなくなり、経費を当初の計画より大幅に節約することができた。
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