2022 Fiscal Year Annual Research Report
多様なダストストームを通した火星上層大気への効率的物質輸送過程の研究
Project/Area Number |
20K04044
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
小郷原 一智 京都産業大学, 理学部, 准教授 (50644853)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 火星大気 / ダストストーム |
Outline of Annual Research Achievements |
火星北半球に位置するArcadia平原西部に着目し,Mars Global Surveyorに搭載されたMars Orbiter Cameraによるおそよ3火星年分の観測画像から深層学習を用いてlocal dust stormを自動検出するとともに,発生緯度経度,発生季節,大きさ(面積)を記録した.その結果,至点と分点の間の中途半端は季節にダストストームが発生しやすいことが分かった.このこと自体は過去の研究でも報告されていたことであったが,火星再解析データセットと比較することで,それに追加して,地表近くに存在する周期2 solsの大気波動の振幅が顕著になるタイミングでダストストームが多発していることを明らかにした.この大気波動はその周期と波数から傾圧不安定波と考えられる.詳しい合成図解析により,当該地域のダストストームは,傾圧不安定波の暖気中で発生する傾向にあった.つまり,寒冷前線のような大きな水平風をともなく総観規模の現象ではなく,不安定な大気中で発生しやすい小スケールで激しい対流とダストストームが関連している可能性が示唆された.しかしながら,再解析データに見られる地表近くの周期2 solsの波動は,T85程度の大気大循環モデルのシミュレーション結果には見られず,そのメカニズムとともに存在自体も検討の余地がある.以上の結果は,2022年度の国際研究会にて報告した. また,同地域のダストストームを検出する過程で,Phlegra Montes東側には風下山岳波起源の波状雲が多発することを発見した.波状雲の典型的な波長を計測し,その季節性を調査したところ,波長20 - 40 kmの風下山岳波が北半球冬季に多発することが分かった.力学的考察によって波状雲の形成高度を見積もったところ,高度10 km以下であることが明らかになった.以上の結果を論文として出版した(2022年度).
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Research Products
(4 results)