2022 Fiscal Year Annual Research Report
星間塵を模した低温氷表面でのイオン衝突反応による核酸塩基の生成とその経路
Project/Area Number |
20K04045
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
岩本 賢一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 講師 (00295734)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン分子反応 / イオン移動度 / 核酸塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は宇宙空間に存在するイオンを用いた反応と低温表面反応を組み合わせ、核酸塩基分子の生成機構の探索を目的としている。予備実験として、イオンファンネルによるイオン分子反応、反応過程で観測された水分子の発生場所の特定、メタステーブル原子を用いた基板上分子脱離装置の開発に取り組んだ。 今回開発したイオンファンネル装置により、3体反応が起こる100Pa程度の条件でのアセチレン分子の逐次反応を観測した。C2H2+,C2H3+とアセチレン分子により生成したC6H5+の構造はエネルギー的に最安定構造の環状構造と鎖状構造が含まれていることが、イオン移動度分析により明らかになった。環状C6H5+は水分子付加体に変換していた。水分子の供給源は、イオントラップ装置であり、液体窒素トラップを装着する等、種々の手法で水分子の供給低減を試みたが、効果は限定的であった。水分子の存在自体は極微量であるため、構造解析には影響がないことを確認した。 メタステーブル原子を用いた基板上の分子の脱離装置を開発した。真空中に設置した焼結体に大気側から試料水溶液を導入し、焼結体の表面でメタステーブル粒子と試料を衝突脱離させた。過去の報告に従い、粘性の高いグリセリンを混入させた予備実験を行ったところ、グリセリン由来のイオンが観測されたものの、試料イオンは観測されなかった。試料送液量を増加させたところ、イオン源の圧力が許容範囲を超え、異常放電が起こったため、実験を中止した。現状では真空ポンプの排気速度が不足しているため、新たな対策を行う必要がある 2021年度に得られた鎖状構造のC6H10について、メチル脱離によるC5H7+ の構造は、エネルギー的に最安定な環状構造1種類であることがイオン移動度分析結果から明らかになった。遷移状態を含めた量子化学計算結果と一致したことから、この結果について論文投稿を行った。
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