2020 Fiscal Year Research-status Report
Orbital evolution of Centaurs and transport of materials in the Solar system
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20K04054
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
樋口 有理可 産業医科大学, 医学部, 助教 (90597139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 孝士 国立天文台, 天文シミュレーションプロジェクト, 講師 (40280565)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ケンタウルス / 太陽系小天体 / 制限三体問題 / 軌道進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系内部における天体の移動を明らかにすることは、惑星形成や生命の起源を理解するために重要である。ケンタウルスは巨大惑星領域にあり惑星の摂動を強く受けるため、典型的には数百万年という短い時間でケンタウルスと呼ばれる領域から去ってしまう。このことはケンタウルスが海王星以遠から絶えず供給されているということを意味する。本研究では、木星と海王星の間に軌道を持つ小天体であるケンタウルスの軌道進化を主に数値計算と観測を用いて明らかにする。 令和2年度では、令和3年度以降に実行する大規模数値計算の準備と、海王星と天王星といった複数惑星との力学的な関係を与えるための研究を解析的な手法で進めた。まず、海王星の外側にある小天体が、木星から海王星までの4個の巨大惑星の摂動を受けながら軌道進化する過程を計算するために必要な計算環境を整えた。また、大規模計算を行う前に繰返し行うテスト計算の準備を進めた。同時に、数値計算結果を正しく理解するために必要な解析的研究を進めた。ケンタウルスの軌道進化は4大惑星すべての影響を受けると考えられるが、その進化を支配する惑星との近接遭遇の過程に着目すると、それは太陽-惑星1個-小天体の制限三体問題とみなすことができる。制限三体問題は解析的な扱いが可能である。そこで、もともとは海王星以遠にあったが海王星の重力散乱により天王星などの内側惑星と軌道交差するようになった小天体が、その天王星などとの重力相互作用により海王星の影響下から逃れる効率を評価する解析解を制限三体問題の枠組みで導出した。その結果を、海王星と天王星それぞれとののティスランパラメタ(惑星との相互作用の強さの目安となる制限三体問題特有の保存量)平面に表し、評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、大規模数値計算を開始するまでのテスト計算を含む準備を進めることができている。また、解析解の導出過程では当初の予想以上の発展があり、今後の大規模計算の結果を正しく理解するための下準備ができた。 コロナ禍と研究代表者の異動により、研究分担者との議論はオンラインがメインとなった。これまでは議論を主に対面で行ってきたため、オンラインベースの議論に慣れるまで多少の時間を要したが、それなりに順応することはできた。 また、別の共同研究者と進めている異なる区分の太陽系小天体の軌道進化に関する研究でも、本研究課題の重要な問題である外縁天体の惑星散乱過程の理解を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究分担者と議論を重ねながら計画を遂行する。令和3年度は前年度の結果を投稿論文にまとめた後に大型数値計算を実行し、統計的議論に耐えうる多数のケンタウルスの軌道進化を計算する。軌道進化の計算と併せ、彗星としての活動性の指標となる温度履歴も計算する。それらを組み合わせ、現在までの軌道進化とこれまでに活動性を獲得していた時間の長さの関係の解明を目指す。研究分担者との議論はコロナ禍にあってはオンラインによる議論がメインとなるが、状況が好転した場合は対面での議論の機会を積極的に設ける。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により、参加予定の複数の国際・国内会議がオンライン開催となり、旅費の支出が予定と大きく異なったため次年度使用額が生じた。 次年度使用額はオンライン会議での発表やオンライン議論を円滑に進めるための機材・周辺機器の購入に使用する。 仮に状況が好転した場合は今年度に予定していた共同研究者との打ち合わせの費用として使用する。
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