2023 Fiscal Year Research-status Report
Impact history of our solar system from water on differentiated asteroids
Project/Area Number |
20K04055
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
長谷川 直 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任研究開発員 (10399553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 萌 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (00830738)
臼井 文彦 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (30720669)
中村 昭子 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40260012)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 衝突 / 小惑星 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球型惑星や分化小惑星には、液体の水、氷、含水鉱物などとして水が存在している。これらの水は、雪線以遠で形成された水に富む太陽系内小天体(氷天体や炭素質コンドライト母天体)が、その水を保持したまま衝突したことにより獲得されたと考えられている。 直径 100 km以上の分化小惑星に現存している水 は、その存在量を明らかにすることによって、木星型惑星の動径方向移動に伴う小天体のミキシングを読み解くトレーサーになり得る。 そこで本研究では、衝突によってもたらされた水が分化小惑星の表層に取り込まれ得る量を室内衝突実験から明らかにし、その結果を天文観測データと組み合わせることにより、分化小惑星上に対する水に富む太陽系小天体の衝突量の導出を行う。 分化小惑星模擬物質に対して、室内衝突実験にて、含水鉱物・氷の衝突を模擬し、 衝突前後にフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)にて分光計測を行う。衝突角度や衝突飛翔体物質を変化させ、分化小惑星模擬物質に残る水の量を調べる。 分化小惑星模擬物質として、分化小惑星のコア物質を模擬した鉄鋼に蛇紋岩弾丸および対照実験としてかんらん岩弾丸を衝突させる実験を行った。そして、衝突させて形成されたクレーターに残った蛇紋岩の脱水の程度を調べるためにクレーターの分光測定を行った。その結果、衝突発生圧力が80~100 GPaより低い場合には、衝突でいったん溶融したシリケイトがクレーター表面で固化するときに蛇紋石から脱水した水をとりこむことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目から開始予定の衝突実験をようやく、昨年度から本格的に実施することかができた。 無水のかんらん岩と、含水鉱物を含む岩石の中でも比較的強度の大きい蛇紋岩を弾丸として用い、秒速3~7 km/sで分化小惑星のコア物質を模擬した鉄鋼ブロックに衝突させてクレーターを形成させる実験を行った。実験後の鉄鋼ブロックについて、クレーター内部とクレーター以外の部分の反射スペクトル測定をFTIRを用いて行った。 その結果、蛇紋岩弾丸の衝突発生圧力が80~100 GPaより低いか高いかでクレーター内部の反射スペクトルに違いがあり、低い圧力の衝突を経て回収されたクレーターには 3 μm帯の吸収が有意にあることを確認した。これらについては、6.1μmの水の吸収も検出した。また、いずれの標的においても、蛇紋石由来の1.4 μmの水酸基による弱い吸収は見られなかったことから、低圧衝突試料の3 μm帯の吸収は、衝突でいったん溶融したシリケイトが固化するときに内部にとりこんだ水によるものと推測した。他方、発生圧力が100 GPaを超える衝突クレーターには、蛇紋石が脱水して生じた可能性がある5μm帯のかんらん石の吸収を捉えた。
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Strategy for Future Research Activity |
一昨年度まではコロナ禍に起因して、本研究テーマの衝突実験の実施が難しかった為に、昨年度に初めて実験実施できた。 クレーター表面に捕獲された水分量を熱重量測定で測定することを試みる。結果を前年度までに得られた分光測定の結果と比較し、含水弾丸に含まれていた水酸基の行方を明らかにする。クレーターから放出された高速エジェクタ量や物質についても二次標的を用いた解析を行い、弾丸物質・速度への依存性を明らかにする。以上をまとめて、投稿論文を準備する。
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