2022 Fiscal Year Annual Research Report
九州南西海域亜表層に出現する小規模な低塩分水塊の観測研究
Project/Area Number |
20K04063
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
仁科 文子 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (80311885)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 沿岸水輸送 / 低塩分水塊 / 黒潮フロント / 東シナ海 |
Outline of Annual Research Achievements |
大陸棚域での高解像度の観測事例を得るために、今年度は6月30日~7月1日に大陸棚縁辺で黒潮フロントを横断するCTD観測をおこなった。当初、この観測は6月上旬~中旬に行なう予定であったが、観測内容の関係で航海期間後半の実施となった。同様の観測は3年連続で行なってきた。今年度は観測時期が遅くなったため、明確な低塩分水を捉えることは出来なかった。大陸棚域から黒潮前線域亜表層への低塩分水塊の移流は水温上昇にともない、黒潮と沿岸水のフロントが弱くなる6月下旬には止まることが示された。この結果は、再解析データから得た、低塩分水塊の出現頻度の季節変動とほぼ一致する。 本研究計画では、黒潮前線付近の亜表層に出現する低塩分水塊の実態を示すことを目的に、再解析データを使用して、移流経路、出現数の季節変動および経年変動、低塩分水の輸送量などを調べた。また実測データを蓄積し、再解析データの結果を検証するのも目的の一つであった。本研究のおもな成果として次のことがあげられる。(1)黒潮前線付近の亜表層の低塩分水塊の出現数は季節変動があり、5月がピークである。この季節変動は黒潮の渦活動の季節変動とほぼ一致する。その理由は、黒潮前線に形成される低気圧性渦により、大陸棚上の低塩分な海水が等密度面に沿って引き込まれ、低塩分水塊として移流されるからである、と考えられた。(2)低塩分水塊の起源となる海域を示した。その海域は季節進行にともなって大陸棚沿いに北上した。(3)低塩分水塊の移流経路は、黒潮前線に沿う経路、黒潮暖水舌に沿う経路の2系統あった。(4)実測データは6月の観測であったためか、低塩分水塊の規模は再解析データのそれよりも空間的に小さかった。低塩分水の輸送量を見積もるには1月~6月までの間の連続的な観測を行なう必要がある。
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