2021 Fiscal Year Research-status Report
大洋スケールの風成駆動流および変動場の力学機構解明に関する研究
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20K04065
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
轡田 邦夫 東海大学, 海洋研究所, 研究員 (40205092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹井 義一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (40419130)
佐々木 英治 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 主任研究員 (50359220)
植原 量行 東海大学, 海洋学部, 教授 (90371939)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海面運動量フラックス / 高解像度数値モデル / 風成駆動流 / J-OFURO3 / JRA55-do / ERA5 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球規模の気候変動予測の実現には大気-海洋相互作用機構の解明が不可避と言え、その一翼を担う高解像度海洋大循環モデル(OGCM)が有力なツールとなっているが、その再現性はOGCMを駆動する海面フラックスに大いに支配されることが明らかになってきた。本研究では、異なる海面フラックスを用いてOGCMを駆動し、得られた再現場の海洋内部構造およびその変動場に注目し、それらの相互比較および現場観測に基づく場との比較を通してOGCMの再現結果の不確定性を明らかにし、予測モデルの再現性向上における課題を明らかにすることを目的としている。 2020年度は、気象庁作成の数値モデル再解析によるJRA55-doと衛星観測に基づくJ-OFURO3の2種類の高解像度海面運動量フラックスでOGCMを駆動する感度実験を行い、その結果の一部を学会等で発表した。2021年度は、上記に加えて欧州中期気象予報センターの作成データERA5も用いた3種類の海面運動量フラックスによってOGCMを長期間駆動し、それらの再現場における時間的空間的な相違を検出すると共に、それらの要因について力学的解釈も含めて解析を進めた。 その結果、海面付近の水温場には顕著な相違がみられないのに対して、熱帯域の亞表層水温には熱帯海洋循環域における100m~200mの深度で最大5度を上回る相違が認められ、同様な海域における海面高度にも相違をもたらしていることが明らかになった。また、それらの時間的推移をみると、エルニーニョ現象等の再現性にも関係することが示唆された。さらに、これらが海上風場の相違に起因した力学的な構造の相違にも及んでいることが推察されることから、用いた海上風データに対して風成海洋力学の視点からの解析を進め、それらの要因を解明すると共に、OGCMの再現性のキーとなる要素を明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はOGCMを稼働する地球シミュレータのリプレースに伴う稼働停止が当初より長引いたこと、またコロナ禍によって遠隔作業を強いられる期間が多かったため、膨大な再現結果を編集処理する作業が円滑に出来なかったこと、さらには研究代表者と研究分担者間での打合せも遠隔会議を余儀なくされたことから、当初の目標より遅れてしまったことは否定できない。その中で、異なる海面フラックスによる感度実験を複数行い、それらの再現場の比較を行った結果、熱フラックスの相違に比べて運動量フラックスの相違によって海洋内部の構造に顕著な相違がもたらされることが明らかになった。 そこで、2021年度は運動量フラックスの相違に焦点を当て、複数の海上風データから得られる海面運動量フラックスを用いてOGCMを長期間駆動し、それらの再現場にどのような相違がもたらされるのか、また力学的な機構にも影響がもたらされるのかに注目することにした。具体的には、高解像度の海面フラックスとして利用可能なデータセットである衛星観測によるJ-OFURO3、数値予報モデルによる再解析データのJRA55-doおよびERA5の全球格子海上風データセットから、海面運動量フラックスを導出して1991年~2017年の期間におけるシミュレーションを行った。再現結果の相互比較による解析を進めており、熱帯域の亞表層水温に顕著な相違がみられるなどの興味深い結果が検出されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
異なる海上風データセットによって駆動したOGCMによる再現結果の相互比較において、表層水温場には比較的類似する特性がみられるにも関わらず、亞表層水温場に最大5度を超える相違がみられることが明らかとなった。これは本研究の端緒となった先行研究の結果を踏襲していると共に、海上風の相違によってOGCMの再現場の海洋内部構造に無視できない力学的な相違が生じること、またエルニーニョ/ラニーニャといった注目すべき現象の再現性にも影響を与えることが示唆される。 2022年度は、異なる再現場をもたらした要因として、海上風の如何なる特性の相違がキーとなっているのかを明らかにすること、また海洋観測に基づく場との比較を通して、OGCMのどの再現場に優位性があるのかなどに注目して解析を進めていく。同時に、国内外の学会もしくは研究集会での発表を通して、本研究の意義をアピールして行く考えである。
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Causes of Carryover |
当初は、国内外の学会参加や研究打合せによる旅費を少なからず計上していたが、ほとんどの学会および研究会がオンライン開催となったことによる余剰分が出たと言える。2022年度はある程度の学会および研究会が現地開催になるとみられることから、旅費の使用を予定している。なお、前年度からの繰越金の一部は、消耗品としてデータ処理等に必要な電子機器等の購入に充てることを計画している。
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Research Products
(2 results)