2021 Fiscal Year Annual Research Report
全球酸化還元収支モデルを用いた富酸素地球大気の持続期間の推定
Project/Area Number |
20K04066
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
尾崎 和海 東邦大学, 理学部, 講師 (10644411)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酸素 / 物質循環 / 生物地球化学 / 将来予測 / 数値モデリング / 地球史 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の地質学的・地球化学的データの蓄積により、地球史を通じた大気組成の変遷について大局的シナリオが描かれるようになってきた.しかしながら、地球大気の将来進化、とくに酸化的な地球大気の持続期間についてはよくわかっていない.本研究課題は、地球大気組成(O2, CO2, CH4)の将来進化を制約し、その支配要因や物質循環の応答について理論的見地から総合的に理解することを目指すものである. 大気組成を規定する物質循環過程を組み込んだ新規の数値モデルの開発は当初の想定以上に順調に進展した.地球表層圏(大気―海洋―地殻)での生元素(C, N, P, O, S)循環をシミュレート可能な数値モデルを改良し、大気光化学反応系と貧―無酸素大気条件下で卓越する生物地球化学プロセスの組み込む作業を行った.その結果、億年スケールで生じる大気組成及び気候変化を同時にシミュレートすることが可能となった.このモデルを顕生代に適用し、モデルの含む様々なパラメータに対する大規模かつ系統的な感度実験を行い、得られた結果の妥当性を地質記録に基づいて検証した.そのうえでモデルを将来の大気進化予測へと適用した結果、億年スケールで生じる太陽光度の増大に起因した炭素循環の応答の結果として大気中CO2濃度が徐々に低下し、生態系の一次生産が律速されることで大気の貧酸素化が進行するという結果が得られた.これは本研究課題の計画段階で予想されていた結果であったが、その他にも約10億年後を境に急速に還元的大気組成へ遷移すること、そのタイミングはマントル―表層圏間での酸化還元収支に強く影響されること、大気の貧酸素化に伴って大気中に炭化水素のもやが形成される可能性があることなど、地球のハビタビリティに関する予期せぬ知見も多く得られた.
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