2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and observational analyses of stability of the Kuroshio current path south of Japan
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20K04072
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
永野 憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋観測研究センター), 主任研究員 (40421888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 拓也 北海道大学, 地球環境科学研究院, 学術研究員 (40466256)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 黒潮 / 大蛇行 / 流路変動 / 海底圧力変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本南岸沖を流れる黒潮は,大蛇行流路と非大蛇行流路という二つの安定な流路をとる.さらに,黒潮大蛇行流路は,安定モードと不安定モードの二つのモードがあることがわかっている.安定モードについては,2004年~2005年の大蛇行流路と海底圧力変動の解析から,海底制御の効果によって流路が安定していることがわかっている.当該年度では,2017年から発生した不安定モードの大蛇行流路について,海底制御の効果が小さいことを海底圧力計データを解析することで示すことができた.この知見は,すでに国際誌に掲載済みであり,日本南岸沖の陸棚斜面の海底制御の効果と中規模渦擾乱等に対する安定性を今後調べるための重要な情報となる. また,黒潮源流域における鉛直流の変化が,黒潮域の海面水温の準10年変動に影響を及ぼしていることがわかり,Pacific Decadal Oscillation (PDO)の位相の反転に関係している可能性を指摘した.この結果は,近日中に国際誌に投稿する予定である.さらに,黒潮源流域に設置したブイで取得した大気海洋データの解析から,数日より短周期の大気擾乱の海面水温変動への影響について,バリアレイヤーの形成等を通じて海洋表層の成層状態が重要な役割をしていることを突き止めた. これらの研究成果をもとに,将来の国際黒潮観測プロジェクトである The 2nd Cooperative Study of Kuroshio and Adjacent regions (CSK-2)の計画策定に必要な情報の提供を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日向灘沖に設置した海底圧力計データを用いて,2017年9月に発生した不安定モードの大蛇行流路に伴う海底圧力の変動特性を調べた.その結果,今回の大蛇行流路の変動には顕著な圧力変化が黒潮流軸の直下にみられないことがわかった.これは,2004年~2005年の安定モードの大蛇行流路に伴う圧力上昇とは異なる特徴であることを指摘した.また,2017年~現在の大蛇行流路の形成に伴って,黒潮の沖側の再循環の傾圧性が強まり,顕著な海底圧力低下を生じ,深層の(南西向き)反流が強まることもわかった.この結果は,Japan Geoscience Union Meeting 2020で発表を行い,Frontiers in Earth Scienceで論文が出版された. 2004年~2005年の安定モードの大蛇行流路と2017年~現在の不安定モードの大蛇行流路の知見をもとに,流路方程式モデルの構築に向けてモデルの設定等の考察を行なった. 流路方程式モデルの構築は予定通り進まなかったが,モデル構築の基礎となる海底圧力の解析の進展があり,その結果が論文として出版されており,おおむね順調に進展していると評価した. 加えて,本研究課題の先行課題から継続して続けているアルゴデータと海面高度データから推定した黒潮源流域の海水密度と鉛直流の三次元場の変動の解析から,鉛直流による混合層の冷却が日本南岸を含む黒潮域の海面水温の準10年変動に影響を及ぼしていることを明らかにした.さらに,黒潮源流域に設置した大気海洋観測ブイデータの解析から,数日より短周期の大気擾乱の海面水温変動への影響について,降水量増加に起因する塩分バリアレイヤーの形成等を通じて,海洋表層の成層状態が重要な役割を果たしていることがわかった.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,今年度までに得られた黒潮大蛇行と海底圧力変動の知見をもとに,流路方程式モデルの構築を行う. 加えて,黒潮源流域の海水密度と鉛直流の三次元場の変動の解析結果をとりまとめ,成果を論文で発表する.さらに,Lowered acoustic Doppler current profiler (LADCP)データとConductivity-Temperature-Depth (CTD)データを用いて,鉛直拡散係数の推定を行い,鉛直流と鉛直拡散の釣り合いを仮定して,鉛直流の変動特性に関する知見をアルゴデータとは独立な観測データから検証する.
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Causes of Carryover |
国内学会や国内研究会がウェブ開催となり,旅費を使用しなかった.来年度,論文の投稿費等に使用する予定である.
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Research Products
(13 results)